PVL児の出産予定日における神経学的特徴

近年, 周産期の低酸素性虚血性脳障害が未熟児における問題としてクローズ・アップされるようになり, なかでも, 脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalasia:以下PVLと略)は, 未熟児において最もよく見られる病理学的変化であり, 脳性麻痺(cerebral palsy:以下CPと略)の最も大きな原因と考えられている. 未熟児出生で問題となってくる痙直型両麻痺は一般に知能発達が良く, 生後数力月は無症状のことが多いため, 退院後に両麻痺として出現してくるものが少なくない. そこで今回はPVL児の早期の神経学的所見を検討するためにPVLと診断された児を出産予定日に評...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.203-203
Hauptverfasser: 鳥山亜紀, 河村光俊, 堀田真一, 山崎武美, 藤村昌彦, 向山敦子, 後藤力, 奈良勲
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:近年, 周産期の低酸素性虚血性脳障害が未熟児における問題としてクローズ・アップされるようになり, なかでも, 脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalasia:以下PVLと略)は, 未熟児において最もよく見られる病理学的変化であり, 脳性麻痺(cerebral palsy:以下CPと略)の最も大きな原因と考えられている. 未熟児出生で問題となってくる痙直型両麻痺は一般に知能発達が良く, 生後数力月は無症状のことが多いため, 退院後に両麻痺として出現してくるものが少なくない. そこで今回はPVL児の早期の神経学的所見を検討するためにPVLと診断された児を出産予定日に評価したので報告する. 対象:平成11年1月~11月までの間に, 広島県立病院のNICUに入院したPVL児6例(男児4名, 女児2名)を対象とした. 対象の在胎週数は28~36週, 出生時体重は784~2080gに分布していた. 方法:NICU入院中, 出産予定日の1週間以内に神経学的評価を行った. 評価はDubowitz Neurological Assessment of Preterm And Full-term Newborn Infant(32項目よりなる)を用いた. また, 原始反射, 立ち直り反応についても評価を行った. 評価は食事と食事の間に行った. 姿勢の項目では6例中3例において異常な姿勢, 後弓反張や強制的なATNRが見られた. 筋緊張の項目では全体的にやや低めの傾向にあるが, 下肢については股関節の外転・外旋制限が6例中3例に見られた. 児の検査中に見られる自発運動は症例の半分に異常項目に挙げられる突発的な動きが見られた. 原始反射では, 把握反射で全体的にgraspingが弱い傾向にあった. 神経行動学的指標では過敏性の項目で6例中3例がどのような刺激にも泣かず, 残りの3例がすべての刺激に対して過敏に泣いた. また, 6例中3例に恥骨上反射が認められた. PVLの神経学的後障害としての神経症状は, 大脳機能の発達とともに痙直型両麻痺が出現する. 大脳皮質運動野から側脳室周囲の白質体部を下行する皮質脊髄路は, 解剖学的に下肢にいたる線維の方が体幹や上肢にいたる線維よりも側脳室に近い内側を通る. そのため, 壊死病変による下行線維の障害はまず下肢を支配する線維に起こり, 痙性麻痺を下肢優位にしている. 今回の結果でも約半数に股関節の外転制限が見られ, 早期から下肢に異常が認められることがわかった. 膝窩角は個人差があり, 左右差や拡大が見られ, PVLに起因すると思われる. 逆に上肢では筋緊張が低い傾向にあり, そのためか原始反射での把握反射も減弱していたが, 一過性のものと考えられる. 行動学的指標の「泣く」の項目では興味深いことにどのような刺激に対しても全く泣かないもの, どの様な刺激に対しても泣くものと2極に別れた. Dubowitzによる今回の評価では, その他の項目において特異的な傾向を示さなかった. 今後, 症例数を増やし, さらに検討してゆきたい.
ISSN:0289-3770