脳血管障害患者における心理的QOL指標の構成概念妥当性の検討
我が国では心理的な安寧に関連した「心理的QOL指標」が石原らにより開発された. 探索的な因子分析を基礎とした内容的妥当性の検討がなされ, 3つの下位尺度「現在の満足感」, 「心理的安定感」, 「生活のハリ」(各4項目)が設定され, 指標として12項目モデルが提起されている. その後, 高齢者においてはそれら3つを一次因子とする二次因子9項目モデルが, 12項目モデルに比してよりデータに適合することが明らかにされている. しかし, これら研究には疾患サンプルにおける構成概念妥当性の検討作業は含まれておらず, 臨床現場において測度としての妥当性を有すかどうかの判断は下せずにいた. そこで本調査研究...
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Veröffentlicht in: | 理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.108-108 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 我が国では心理的な安寧に関連した「心理的QOL指標」が石原らにより開発された. 探索的な因子分析を基礎とした内容的妥当性の検討がなされ, 3つの下位尺度「現在の満足感」, 「心理的安定感」, 「生活のハリ」(各4項目)が設定され, 指標として12項目モデルが提起されている. その後, 高齢者においてはそれら3つを一次因子とする二次因子9項目モデルが, 12項目モデルに比してよりデータに適合することが明らかにされている. しかし, これら研究には疾患サンプルにおける構成概念妥当性の検討作業は含まれておらず, 臨床現場において測度としての妥当性を有すかどうかの判断は下せずにいた. そこで本調査研究は, 心理的QOL指標の構成概念妥当性を検討することをねらいに, 脳血管障害患者を対象に提起されている2つの因子モデルの適合を検証し, 適切なモデルについて地域高齢者との因子不変性を検討することを目的とした. 【対象と方法】対象は岡山県倉敷市内の某病院で脳血管障害の既往歴のある外来患者のうち調査に同意の得られたものとした. 有効回答者で柄澤式老人知能の臨床的判定基準により知能衰退の疑いのないとされる138名を集計対象者とした. 提起された2つの因子モデルについて共分散構造分析による確証的因子分析をおこない, 各モデルのデータへの当てはまりの良さを検討した. 次に, 適切と判断された因子モデルに関して, 岡山県A町の健康な在宅高齢者338名との同時因子分析をおこない因子不変性の検討を行った. なお, 脳血管障害患者とA町高齢者について総得点および3つの下位尺度得点の平均を観察することで対象集団の特性を検討した. 【結果】脳血管障害サンプルは男性74名, 女性64名, 平均年齢72.7±9.9歳であった. 診断名は脳出血35名, 脳梗塞56名, くも膜下出血4名, 多発性脳梗塞43名であった. 12項目モデルはX^2 値が69(df=51, p=.047), AGFIが0.891と統計学的許容水準を満たさなかった. 一方, 9項目モデルの適合度はX^2 値が24(df=24, p=.459), AGFIが0.934と許容水準を満たしたことからより適切なモデルと判断した. A町高齢者サンプル(男性140名, 女性198名, 平均年齢72.7±6.5歳)との同時因子分析では, パラメータを同値に拘束しても適合が許容水準を満たし, 因子構造の不変性が認められた. なお, 平均の比較では, 脳血管障害サンプルにおいて総得点が低い傾向にあり(p=.065), 下位尺度の「心理的安定」については有意に低いことが観察された(p=.036). 【考察】脳血管障害サンプルにおいて「心理的QOL」に関する二次因子9項目モデルが高い適合度を示すとともに, 高齢者サンプルに対して測定不変の水準においても同一の因子構造が成立したことから, 本指標の構成概念妥当性が支持されたと考えられた. なお, 平均得点の比較において脳血管障害サンプルの得点が低い傾向を示したが, 今後より詳細な検討が必要と考えられた. |
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ISSN: | 0289-3770 |