脳室周囲白質軟化症のMRI所見と臨床像との関連

近年, 脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia:PVL)は脳性麻痺の主原因として注目されており, 側脳室周囲に嚢胞が複数あり, 後方にあるものほど運動障害の程度は強いと報告されている. そこで, cystic PVLを認めた子とものMRI所見をもとに検討し, 臨床像と嚢胞形成の部位, 大きさに関連性を得たので報告する. 【対象と方法】対象は1994年から4年間に当院NICUで出生し, 退院時MRIにおいてcystic PVLを認めた14例(男児9例, 女児5例)である. 方法はNICU退院時のMRI所見をもとに, (1)PVLの形成部位(2)嚢胞の大きさに...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.42-42
Hauptverfasser: 羽川希, 井上彩子, 亀山麻子, 西出康晴, 佐伯麻衣, 溝渕康子, 伊勢眞樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:近年, 脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia:PVL)は脳性麻痺の主原因として注目されており, 側脳室周囲に嚢胞が複数あり, 後方にあるものほど運動障害の程度は強いと報告されている. そこで, cystic PVLを認めた子とものMRI所見をもとに検討し, 臨床像と嚢胞形成の部位, 大きさに関連性を得たので報告する. 【対象と方法】対象は1994年から4年間に当院NICUで出生し, 退院時MRIにおいてcystic PVLを認めた14例(男児9例, 女児5例)である. 方法はNICU退院時のMRI所見をもとに, (1)PVLの形成部位(2)嚢胞の大きさについて調査し, 臨床像別に比較検討した. 【結果】14例中12例(85.7%)に痙性麻痺を認めた. 痙性麻痺を呈した群を麻痺の臨床像別に分類すると, 四肢麻痺(以下Q群)3例, 両麻痺(以下D群)5例, 片麻痺(以下H群)2例, 単肢麻痺(以下M群)2例であった. 残りの2例は痙性麻痺を認めなかったものの運動発達は遅延(以下DD群)していた. 臨床像別に嚢胞形成部位を比較すると, Q群は左右対称に, 側脳室体部から後角, または前角から後角の広範囲に嚢胞が散在していた. D群5例のうち2例は前角から後角または体部に左右対称にすじ状の嚢胞が散在していた. 3例は数個の嚢胞に加え, 脳室壁の不整, 脳室拡大を認めた. H群は一側のみ体部に嚢胞が存在し, もう1例は, 一側の前角から下角にかけて嚢胞が点在, 他側は前角に1つ存在し左右差が明確であった. M群は一側の前角または体部に嚢胞が2, 3個点在していた. DD群は一側, 一部位にのみ嚢胞形成を認めた. 大きさ別では, Q群, H群は1つの嚢胞の大きさが直径5mm以上であり, D群, M群, DD群は3mm以下の傾向があった. 【考察】全ての症例においてPVL好発部位である側脳室周囲白質に嚢胞形成を認めた. DD群とM群は, 前角または前角に近い体部の限局された一部分にのみ嚢胞が存在していた. 前角周囲は錐体路を直接障害しないため麻痺を呈さず, 呈しても一側下肢に極軽度の痙性を生じたものと考える. H群に関しては, 一側性であることが誘因であると考える. Q群とD群では, 脳質周囲のPVLは左右対称であり, 前後の広がりも全体または体部から後角に位置するという同様の結果を得たが, 嚢胞のサイズに関して, Q群の方が大きく, 側脳室外側の領域を占める割合が大きい傾向にあった. 解剖学的にも, 側脳室白質の体部から後角は錐体路に相当し, 下肢に至る線維は側脳室に近い内側を走行しているため, 横径が大きいほど体幹や上肢に至る線維に影響が及んでおり, 四肢麻痺を呈していると考える. これらの結果は, 過去の研究報告と一致していた. MRI所見によりPVLの形成部位と大きさを検討することは, 神経学的予後すなわち麻痺の部位や程度を推測するための一手段であり, 理学療法プログラム実施に有用である.
ISSN:0289-3770