冠動脈バイパス術後の呼吸理学療法の効果

【緒言】胸部外科手術後には呼吸筋や胸郭運動能の障害により, 呼吸機能が低下する. また, 体外循環や麻酔の影響, 術後人工呼吸器管理などの影響を受け, 酸素化や換気が障害される. よって術後には呼吸器合併症が発症する(可能性がある)ため, その予防・改善を目的に呼吸理学療法が行われている. しかし, 冠動脈バイパス術(CABG)後の呼吸理学療法の効果や必要性に関しては未だ議論がある. そこで本研究では無作為化比較対照試験を用いてCABG後の呼吸理学療法の効果を検討した. 【対象】対象はCABGを受けた心疾患患者62例. 緊急手術例や手術開始が午後で手術翌朝まで人工呼吸器管理を行った症例は除外し...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.27-27
Hauptverfasser: 熊丸めぐみ, 高橋哲也, 安達仁, 櫻井繁樹, 金子達夫, 大林民幸, 佐藤泰史, 稲葉博隆, 垣伸明, 大木茂, 稲葉純子, 関成美, 三宅知子, 大島茂, 谷口興
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【緒言】胸部外科手術後には呼吸筋や胸郭運動能の障害により, 呼吸機能が低下する. また, 体外循環や麻酔の影響, 術後人工呼吸器管理などの影響を受け, 酸素化や換気が障害される. よって術後には呼吸器合併症が発症する(可能性がある)ため, その予防・改善を目的に呼吸理学療法が行われている. しかし, 冠動脈バイパス術(CABG)後の呼吸理学療法の効果や必要性に関しては未だ議論がある. そこで本研究では無作為化比較対照試験を用いてCABG後の呼吸理学療法の効果を検討した. 【対象】対象はCABGを受けた心疾患患者62例. 緊急手術例や手術開始が午後で手術翌朝まで人工呼吸器管理を行った症例は除外した. 【方法】研究デザインは無作為化比較対照試験. 術前から被験者を以下の3群のうちの1つに割り当てた. コントロール群(C群, n=22):特別な呼吸理学療法は行わずに, 術後1日目から上下肢の自動運動と受動座位を行う. 術後2日目に心嚢ドレーン抜去後に起立, 可能であれば歩行. インセンティブスパイロメータ群(IS群, n=21):術前よりインセンティブスパイロメータ(ボルダイン2500)を用いた深呼吸訓練を指導し, 術後は1日目の朝より10回の深呼吸を1日2回ICU退出まで行う. また, 適時自主的に深呼吸をするように指示, 離床プログラムはコントロール群に準ずる. ウイニング後から翌朝まで呼吸理学療法を行う群(Over night chest physiotherapy群;OCP群, n=19);術当日, 抜管2時間後から2時間おきに用手的呼吸介助法を用いた呼吸理学療法を術翌日の朝まで行う(覚醒していれば夜間でも行う). 用手的呼吸介助法は上部胸郭と下部胸郭に各5回行い, 腹式呼吸も介助下で5回行う. 離床プログラムはコントロール群に準ずる. 各群間の年齢, 身長, 体重, 既往症, 喫煙習慣の有無, 術前左室駆出率, バイパス本数, 体外盾環時間, 大動脈遮断時間, 麻酔期間, ICU入室から人工呼吸器離脱までの時間, 術後初めて起立できたときまでの期間, 手術から病棟歩行自立までの期間, ICU退出時の酸素投与状況, 酸素投与終了までの時間, 呼吸器合併症の有無(術後1日目と3日目の胸部X線写真)を比較検討した. なお, 当院では過度の呼気努力により狭心症発作誘発の恐れがある者には呼吸機能検査を施行していないため, 今回の検討からは呼吸機能検査の結果は除外した. 【結果および考察】平均年齢, 身体的特徴, 術前状態, 手術状況, 術後の回復状況は各群間に差を認めず, 各群に割り当てられた対象の均質性が証明された. OCP群ではICU退出時の酸素投与量が鼻腔カヌラ2Lと他の群に比べて少なく(C群3L, IS群4L), 酸素投与終了までの期間も他の群に比べて有意に短かった(OCP群4.3日, C群5.9日, IS群5.4日). またOCP群で呼吸器合併症は認めなかった(無気肺:C群2例, IS群2例). これらは術後早期からの積極的呼吸理学療法の効果であり, 術後可及的早期に十分な肺の拡張を促すことの重要性を示唆している. また, IS群とC群間にはいずれの項目にも差を認めなかったことから, 術後1日目からの呼吸理学療法では早期離床に付加する効果はないことが示された. 【結論】CABG後の呼吸理学療法は術直後から術翌日朝までのアプローチが重要で, 術翌日の朝からインセンティブスパイロメータを用いたアプローチでは早期離床に付加する効果はない.
ISSN:0289-3770