痙縮評価における腱反射とAshworth Scaleの関係(T波を用いた考察)

痙縮の臨床的評価において, 腱反射は, ハンマー叩打での左右差や, 亢進または減弱などで比較され, 被動抵抗は, 折りたたみナイフ現象の度合いで判断する. しかし, その重症度に対する相互関係は主観的で, 実際に客観的数値としての確認は困難である. 今回, 我々は, T波と, Ashworth Scale(以下AS)を用いて, 痙縮に対する客観的評価を両評価法とその相互関係で試み, その結果, 若干の知見を得たので報告する. 【対象】 当院の発症から3ヵ月経過した脳血管障害(CVA)患者から, 15例(右片麻痺8例, 左片麻痺7例, 男7例, 女8例, 年齢53才~75才, 平均67.1才)を...

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Veröffentlicht in:理学療法学 2000, Vol.27 (suppl-2), p.23-23
Hauptverfasser: 田中仁, 種池英次, 手塚康貴, 森野恭典, 畠中耕志, 平岡範人, 森本宏, 岩間真由美, 中村幹夫, 松尾篤, 藤原求美, 高木紫穂, 橋本務
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:痙縮の臨床的評価において, 腱反射は, ハンマー叩打での左右差や, 亢進または減弱などで比較され, 被動抵抗は, 折りたたみナイフ現象の度合いで判断する. しかし, その重症度に対する相互関係は主観的で, 実際に客観的数値としての確認は困難である. 今回, 我々は, T波と, Ashworth Scale(以下AS)を用いて, 痙縮に対する客観的評価を両評価法とその相互関係で試み, その結果, 若干の知見を得たので報告する. 【対象】 当院の発症から3ヵ月経過した脳血管障害(CVA)患者から, 15例(右片麻痺8例, 左片麻痺7例, 男7例, 女8例, 年齢53才~75才, 平均67.1才)を無作為に抽出した. 【方法】 2名の理学療法士で, T波測定と被動抵抗測定を分担した. T波は, 両側の下腿三頭筋から, 皿電極を腓腹筋の筋腹中央部に関電極, 膝蓋骨中心部に不関電極を貼付して単極導出法で導出した. 被験者を, 下腿三頭筋トルク測定用に改良したミナト医科学製COMBIT-CB1に背臥位にした. 膝関節伸展位で足部を測定板に固定し, 下腿三頭筋の張力を試験中一定に設定した. トリガーは, 村田製作所製衝撃センサーPKSを装着したハンマーとし, 筋電計は, Nicolet社製Viking Fourを使用した. 下腿三頭筋腱中央部に後方から叩打を加え(ハンマー強度を筋電計にて増幅し, その振幅が80mV以上をトリガーとした. ), 片側に7回実施した. ASは, 被験者を背臥位にして, 足関節背屈の可動域内にて, すばやい他動運動(約1秒間)を実施して評価した. 【結果】 CVA患者のT波最大振幅値の左右比率(健側基準)は, 平均1.93±0.94(0.94~4.09)であった. ASは, scale 0が0例, 1が2例, 2が4例, 3が4例, 4が5例であった. T波振幅とASの関係をSpearmanの順位相関で検討するとρ=0.54(n=15, p=0.04)で統計学上有意な相関関係が認められた. ASの各段階に対する左右比率の平均は, scale 1は, 1.19±0.26, 2は, 1.41±0.30, 3は, 2.13±0.81, 4は, 2.47±1.26であった. 【考察】 我々は, 数年前より痙縮の客観的評価の研究を行い, テーマの一展開として今回の研究に至った. 無作為に抽出した被験者の中で, 両検査法に相関がみられたことは, 筋緊張が高いと, 腱反射が亢進しているという我々の臨床的イメージを客観的に裏付けるものと考えられる. また, scale各段階に応じての反射左右比が, おおよそ1倍, 1.5倍, 2倍, 2.5倍となったことは, その比例的な関係が伺える. しかし, それに平行して標準偏差が大きくなっているため, その筋緊張亢進状態のなかに, 痙縮だけでなく固縮の要素もあり, 痙固縮を呈していることが示唆された.
ISSN:0289-3770