当院における成人中枢神経疾患患者の咀嚼嚥下障害に関する実態調査
【はじめに】咀嚼嚥下機能は中枢神経疾患でしばしば障害されるが, その障害の内容や程度は疾患によっても, また各症例によっても異なる. 症例個別の問題に対応する為には評価が重要となるが, 各口腔器官の運動性の評価では, 機能障害としての因果関係を説明するには不十分である. また, 障害を詳細に評価する他の手段としてVideofluorographyが代表的であり, 最近では三次元エコーなどの計測機器があるが, 実際の理学療法の臨床場面では応用しにくい. そこで今後, より機能的な視点での評価法を作成する為の参考として成人中枢神経疾患患者の咀嚼嚥下障害の実態調査を行った. 【対象と方法】平成10年...
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Veröffentlicht in: | 理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.83-83 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【はじめに】咀嚼嚥下機能は中枢神経疾患でしばしば障害されるが, その障害の内容や程度は疾患によっても, また各症例によっても異なる. 症例個別の問題に対応する為には評価が重要となるが, 各口腔器官の運動性の評価では, 機能障害としての因果関係を説明するには不十分である. また, 障害を詳細に評価する他の手段としてVideofluorographyが代表的であり, 最近では三次元エコーなどの計測機器があるが, 実際の理学療法の臨床場面では応用しにくい. そこで今後, より機能的な視点での評価法を作成する為の参考として成人中枢神経疾患患者の咀嚼嚥下障害の実態調査を行った. 【対象と方法】平成10年9月現在当院で理学療法訓練を行っている患者のうち, 咀嚼嚥下に何らかの問題を持つ調査可能な19名に対し当院作成の調査用紙を用いた. 患者は脳血管障害13例(両側障害8例, 片側障害5例), パーキンソニズム6例であり, 平均年齢63歳, 男性10名, 女性9名である, 調査内容は(1)基本動作能力と姿勢評価, (2)咀嚼嚥下の状態, (3)各口腔器官について, (4)構音についての質問及びテストとし, 平成10年9月~10月に実施した. 【結果】1.全体を通して:脳血管障害の両側障害例は, 基本動作能力の如何に関わらず咀嚼嚥下障害を高い頻度で認めた. 全症例で後頸部の過剰筋収縮が認められた. 2.咀嚼嚥下の状態:18例で水分摂取時にむせが認められた. 口腔内保持能力を評価する一つの手段として, 頬を膨らませての鼻呼吸のテストをしたが, 不十分・不可のケース12例のうち, 水分摂取でむせがあるケースは11例であった. 明らかに顔面の非対称性のあるケースでは全例に口腔内の食塊の残留が認められた. 3.各口腔器官について:脳血管障害例とパーキンソニズム例を比較すると, パーキンソニズム例では開口量や顎・舌の運動範囲が狭い傾向が認められた. 4.構音について:18例で構音障害が認められた. 【考察】今回の結果では, 脳血管障害とパーキンソニズムの傾向の違いは見られたものの, 疾患別, 障害別での咀嚼嚥下障害の傾向を見出す事は困難で, 症例ごとの持っている問題の違いを感じた. 一方, 口腔内保持能力の低さと水分摂取でむせのあるケースがほぼ一致した事は, むせの要因の一つに, 食物, 特に水分が口腔内に咀嚼中もしくは送り込み中に食塊として保持できるかという能力の如何による事が示唆された. そのような意味でも症例ごとに対応できる機能障害の因果関係を知る評価法が更に工夫されるべきと思われる. また, (1)全例に後頸部の過剰筋収縮が認められた事で, その姿勢が咀嚼嚥下に関する器官にどのような影響を与えているのか. (2)構音障害がほぼ全例に認められた事で, 構音障害と咀嚼嚥下障害を共通した筋制御の障害と捉える事が可能であれば, 咀嚼嚥下運動と運動要素が似ている特定の構音で評価や訓練が可能であるか. 以上の事は, 今後の検討課題である. |
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ISSN: | 0289-3770 |