車椅子片足駆動における, 駆動側・非駆動側の筋電図学的比較検討

【はじめに】車椅子の片足駆動(以下, 片駆)における, 体幹筋の機能は近年注目される研究対象である. しかし, 両側の体幹・下肢筋を多角的に研究した報告は少ない. 今回我々は, 多チャンネルに筋電図学的解析を試み, 駆動側(動側)と非駆動側(非側)の比較検討を行った. 【対象と方法】被検者は, 21から55歳の健常成人男子22名である. JIS規格標準型車椅子を使用し, 背部が背もたれに付くよう座らせ, 両前腕は肘受けの上に, 左足はフットプレートの上に置き, 右膝屈曲90度位で右足底を床に密着させた. 今回, 測定条件統一のため, 片駆方法は右下肢の等尺性収縮のみとし, 右膝関節屈曲(後蹴)...

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Veröffentlicht in:理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.65-65
Hauptverfasser: 大坪尚典, 葛巻尚志, 大村和世, 武舎 進, 浅妻茂章, 池田正人
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】車椅子の片足駆動(以下, 片駆)における, 体幹筋の機能は近年注目される研究対象である. しかし, 両側の体幹・下肢筋を多角的に研究した報告は少ない. 今回我々は, 多チャンネルに筋電図学的解析を試み, 駆動側(動側)と非駆動側(非側)の比較検討を行った. 【対象と方法】被検者は, 21から55歳の健常成人男子22名である. JIS規格標準型車椅子を使用し, 背部が背もたれに付くよう座らせ, 両前腕は肘受けの上に, 左足はフットプレートの上に置き, 右膝屈曲90度位で右足底を床に密着させた. 今回, 測定条件統一のため, 片駆方法は右下肢の等尺性収縮のみとし, 右膝関節屈曲(後蹴), 右股関節外旋(内蹴), 右股関節内旋(外蹴)の3動作について調べた. 車椅子を固定し, 上記姿勢と足底位置を変えることなく, 右下肢以外はできるだけ弛緩させ, 最大努力にて等尺性収縮を行うよう指示した. 【解析方法】多用途生体テレメーターシステム(NEC製)を使用し, 腹直筋, および両側の外腹斜筋(OL), 脊柱起立筋(ES), 大殿筋(GM), 中殿筋(Gm), 大腿直筋(RF), 内側ハムストリングス(HM), 計13ヶ所の表面筋電図を測定した. 導出した筋電波形は, パーソナルコンピューターに保存し, キッセイコムテック製ソフト(BIMUTAS)で解析を行い, 等尺性収縮5秒間の筋電図積分値を算出し, 各筋活動量を定義した. また, 各動作における積分値の左右差と相関について, 統計学的検討を行った. 【結果】後蹴では, 右ES94.7±41.8(以下, mV・ms)<左ES176.8±95.8(NS), 右RF51.4±17.9<左RF182.3±78.8(NS)となり, 動側より非側が大きい傾向を示した. 内蹴でも, 右OL121.3±55.9<左OL155.6±103.3(NS), 右ES66.0±14.1<左ES145.9±82.3(NS), 右RF104.6±71.4<左RF122.6±82.3(NS)となり, 非側が大きかった. 外蹴では, 右OL132.5±82.2>左OL114.0±63.2(NS), 右ES127.3±88.8>左ES95.6±61.9(NS), 右GM122.5±68.4>左GM66.1±35.5(NS), 右Gm224.5±130.7>左Gm55.7±23.5(p<0.05)と逆に動側が大きく, また, 右RF102.0±53.2<左RF162.3±125.5(NS)で非側が大きかった. 全体的に, 各筋間に高い相関は認められなかった. 【考察】後蹴では, 動側HMの強い収縮により, 骨盤が動側下方へ引きずられ, 体幹は屈曲される. 非側ESの優位な活動は, この抑制作用であり, 三浦ら(1998)の説を支持している. さらに非側RFの優位な活動は, フットプレートを踏ん張り, 骨盤の滑り落ちを抑制する作用と思われる. また内蹴では, 動側の強い股外旋のため, 骨盤は体幹に対して動側に回旋される. 非側OLとESの活動優位は, この抑制作用を示すと思われる. 一方外蹴では, 動側の強い内旋が体幹を非側へ回旋させるが, 背もたれによる非側背面の固定のため, 非側体幹筋の活動はあまり必要なかったものと思われる. 今回, 全体的にばらつきが大きく, 主動作筋以外に明確な左右差や相関を認めなかった. これは, 最大筋収縮を支える大きな固定力が必要だったこと, 体格差や上肢を含めた体節内の固定様式に個人差が大きかったことが原因と推察される. 【まとめ】片駆では, 非側体幹筋は体幹の屈曲・回旋抑制に, 非側下肢筋は骨盤の滑り落ち抑制にそれぞれ作用することが示唆された.
ISSN:0289-3770