脊髄小脳変性症患者の測定障害に対する周波数解析の試み

第33回本学会で, 脊髄小脳変性症患者(SCD)では, 視覚からのフィードバック情報は, 必ずしも良い影響を与えないことを報告した. 今回は, 小脳性運動失調症で測定過大は, 視覚情報の処理が遅れているのではないかと仮定した. そこで, 健常人で視覚情報遅延モデルを作り, 測定障害の周波数解析を行い, 症例と比較したので報告する. 対象は, 当院外来通院中の小脳性運動失調症を呈するSCD患者3例(症例群), 比較対象群は, 健常人5例(健常群), 健常人の視覚情報遅延状況5例(視覚遅延群)とした. 視覚情報遅延状況は, ビデオカメラのスローシャッター機能を利用し作成した. 課題は, 長さの異な...

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Veröffentlicht in:理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.45-45
Hauptverfasser: 堀内郁孝, 角屋利恵子, 島袋琴美, 榊 広光, 東 祐二, 藤元登四郎, 田村俊世
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:第33回本学会で, 脊髄小脳変性症患者(SCD)では, 視覚からのフィードバック情報は, 必ずしも良い影響を与えないことを報告した. 今回は, 小脳性運動失調症で測定過大は, 視覚情報の処理が遅れているのではないかと仮定した. そこで, 健常人で視覚情報遅延モデルを作り, 測定障害の周波数解析を行い, 症例と比較したので報告する. 対象は, 当院外来通院中の小脳性運動失調症を呈するSCD患者3例(症例群), 比較対象群は, 健常人5例(健常群), 健常人の視覚情報遅延状況5例(視覚遅延群)とした. 視覚情報遅延状況は, ビデオカメラのスローシャッター機能を利用し作成した. 課題は, 長さの異なる線を引き, 線引きテストを繰り返し行うものを3回施行した. この計測の日時を変えて2回行った. 測定障害の結果は紙面上で判断した. 計測は無拘束型加速度計を用い, サンプリングは128Hz, センサの装着部位は手背面とした. 加速度データはMatlabのFFTプログラムを用いて周波数解析を行った. 症例詳の課題遂行時間(時間)は以下のとおりで, 課題遂行回数(回数)に関係なく2日間ともほぼ一定であった(症例1:平均50.3±5.4秒, 測定過大は13±1.4個, 測定過小は0個. 症例2:平均79.7±7.7秒, 測定過大は6.3±1.8個, 測定過小は2.3±2.7個. 症例3:平均57.1±4.8秒, 測定過大は3.8±1.3個, 測定過小は3.7±1.5個). 症例1は測定過大のみが認められたが, これは, 他の症例に比較して時間が短いためと考える. 周波数解析では, 症例群の課題遂行のピークは2個程度で, 1日目, 2日目ともに同様の波形を認めていた. また, 小脳性動揺のピークも認めていた. 症例では, 細かな運動制御が困難な為, 1, 2個のピークしか出現せず, 波形に変化がなかったと考える. 健常群では, 回数を重ねるごとには時間は短かくなっていた. (時間は平均36.3±7.6秒, 測定過大は3.6±2個, 測定過小は0.3±0.5個. )周波数解析では, 1日目は課題遂行のピークを複数認めたが, 2日目では収束していた. このことは, 1日目は, 線引きテストの異なる線の長さに適応するよう細かに運動を制御し, 2日目は, 課題を学習した為, 一定の制御が可能になったと考える. 視覚遅延群では, 回数を重ねるごとに時間は短かくなっていた. (平均106.3±65.4秒, 測定過大は10.1±5.4個, 測定過小は0.9±1個. )周波数解析では, 1日目の1, 2回目は症例と同様な波形を認めたが, 回数を重ねるごとに, 健常群のと同様の波形を示した. このことは, 回数を重ね, 学習が進むごとに, 閉ループ制御から開ループ制御に変化した為と考える. 健常人で視覚遅延モデルを作り, 測定障害の周波数解析を行った. 症例群の周波数特性は, 2日間を通し変化はみられなかった. 視覚遅延群の1日目と症例群の周波数特性は類似していた.
ISSN:0289-3770