脳血管障害患者における起立負荷試験時の自律神経活動状況

【目的】我々は1997年本学会において脳血管障害患者の起立時血圧変動と降圧剤の影響について述べた. この中で起立時の自律神経活動の障害が及ぼす影響について触れたが, 定量的な評価を基に確認できていない. 今回, 脳血管障害患者(Binswanger型脳梗塞:B群, Lacunar型脳梗塞:L群)における起立負荷試験での自律神経(交感/副交感神経)活動状況の検討を行い, 各病型における特徴を明らかにしたので報告する. 【対象】B群23例:平均年齢69.5±6.8歳とL群19例:71.3±10.1歳とした. 【方法】患者に本検査の説明を十分に行い, 起立負荷として, 起立べッドで5分間の初期安静の...

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Veröffentlicht in:理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.27-27
Hauptverfasser: 奥田哲也, 早川 勝, 山田順亮, 渡辺正樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】我々は1997年本学会において脳血管障害患者の起立時血圧変動と降圧剤の影響について述べた. この中で起立時の自律神経活動の障害が及ぼす影響について触れたが, 定量的な評価を基に確認できていない. 今回, 脳血管障害患者(Binswanger型脳梗塞:B群, Lacunar型脳梗塞:L群)における起立負荷試験での自律神経(交感/副交感神経)活動状況の検討を行い, 各病型における特徴を明らかにしたので報告する. 【対象】B群23例:平均年齢69.5±6.8歳とL群19例:71.3±10.1歳とした. 【方法】患者に本検査の説明を十分に行い, 起立負荷として, 起立べッドで5分間の初期安静ののち, 90度の他動的起立位を10分間とり, 再び5分間の安静の計20分間とした. 自律神経活動状況の測定として心拍変動測定装置:Active tracer(AC300:GMS社)を用い, 試験中の心拍変動を30秒間隔で測定した. 解析にはMemCalc-Pro.Ver.2.5を用いてスペクトル解析を施し, 自律神経活動周波数と強度を1分間隔の累積加算による平均値で求めた. これにより交感神経系(以下L/H比と略す)と副交感神経系(以下HFと略す)の活動状況を明らかにし, 初期安静時/起立時/再度安静時での比較を行った. 【結果】初期安静時L/H比はB群:3.8±4.1;L群:2.4±1.4, HFはB群:35.7±31.3;L群:102.3±168.8であった. 起立時L/H比はB群:4.8±4.4;L群:3.0±2.2, HFはB群:36.8±38.3;L群:72.1±94.7であった. 再度安静時L/H比はB群:4.2±4.7;L群:2.0±1.4, HFはB群:49.3±53.8;L群:107.1±158.9であった. 【考察】健常者において, 起立することでL/H比は増加しHFは減少する. すなわち起立で交感神経は緊張し, 副交感神経は抑制されることは既に解明されている. 今回, L群では概ねこの傾向が確認できた. B群では起立での交感神経の緊張はL群と差はなかったが, 副交感神経の活動が全体に低く, 起立による抑制が認められなかった. すなわちB群では副交感神経活動が障害の主体といえた. 今回, 起立での自律神経機能調整の障害の評価としての本試験は有用と思われた. 今後は薬剤の影響や血圧変動, また活動状況などを含めた検討が必要であろう.
ISSN:0289-3770