脳卒中片麻痺患者における非麻痺側, 麻痺側下肢筋酸素動態の差異と活動性の及ぼす影響

〔はじめに〕脳血管障害による機能障害は, 運動, 感覚, 高次脳等多岐にわたる. このうち運動機能障害は筋出力の量質的変化を起こし, 長期経過をたどる場合には廃用性の筋萎縮等の二次的合併症を生じさせる. 筋萎縮を生じた場合, 筋質量の低下と共に筋酸素動態の変化をおこす可能性があると考えられる. 近年, 近赤外線分光法により生体組織の酸素動態を無侵襲に測定する事が可能となった. 今回我々は, 脳卒中片麻痺患者において, 下肢筋酸素動態を測定し, 活動性による影響および麻痺側, 非麻痺側の差異を検討し, 若干の知見を得たので報告する. 〔対象と方法〕対象は脳卒中片麻痺患者30名(平均年齢71.7才...

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Veröffentlicht in:理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.24-24
Hauptverfasser: 寺田 茂, 生田光子, 紺谷昌代, 熱野光代, 後藤克宏, 森吉美恵
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:〔はじめに〕脳血管障害による機能障害は, 運動, 感覚, 高次脳等多岐にわたる. このうち運動機能障害は筋出力の量質的変化を起こし, 長期経過をたどる場合には廃用性の筋萎縮等の二次的合併症を生じさせる. 筋萎縮を生じた場合, 筋質量の低下と共に筋酸素動態の変化をおこす可能性があると考えられる. 近年, 近赤外線分光法により生体組織の酸素動態を無侵襲に測定する事が可能となった. 今回我々は, 脳卒中片麻痺患者において, 下肢筋酸素動態を測定し, 活動性による影響および麻痺側, 非麻痺側の差異を検討し, 若干の知見を得たので報告する. 〔対象と方法〕対象は脳卒中片麻痺患者30名(平均年齢71.7才)及び, 健常者30名(平均年齢72.1才)であった. 筋酸素動態は島津製作所製OM100ASを使用した. 外側広筋筋腹にプローブを装着し, 下肢筋酸素動態指標として全ヘモグロビン(以下TM), 酸化ヘモグロビン(以下OH), 還元ヘモグロビン(以下DOH)の各指数及び酸素飽和度(以下iSO2)を測定した. また, 大腿骨大転子~腓骨小頭間の長さ(A)及び, その中点部の周径(B)を計測し, B/A値を周径率(以下MA)とした. 活動性は片麻痺患者群を座位不能群, 介助歩行群, 自立歩行群の3群に分類した. 全測定終了後健常者群及び3群に活動性分類した片麻痺群の計4群の非麻痺側におけるTH, OH, DOH, iSO2, 周径率の有意差を多重比較検定にて検討した. また片麻痺患者群の麻痺側, 非麻痺側におけるTH, OH, DOH, iSO2, 周径率の差をPaired-T testを用いて有意性を検討した. 〔結果〕健常者及び3群に活動性分類した片麻痺群の非麻痺側各測定値は, THは歩行自立群, 正常群が座位不能群よりも有意に高値であった. OHは介助歩行群, 歩行自立群, 正常群が座位不能群よりも有意に高値であり, また正常群が介助歩行群よりも有意に高値であった. DOHは, 介助歩行群, 正常群が座位不能群よりも有意に低値であった. iSO2は座位不能群40.6±9.5%, 介助歩行群55.9±9.1%, 歩行自立群65.0±11.7%, 正常群63.3±10.1%となり, 介助歩行群, 歩行自立群, 正常群が座位不能群よりも有意に高値であり, 歩行自立群, 正常群が介助歩行群よりも有意に高値であった. 周径率は座位不能群76.2±14.4%, 介助歩行群98.1±10.5%, 自立歩行群104.9±9.5%, 正常群103.8±10.5%となり, 介助歩行群, 歩行自立群, 正常群が座位不能群よりも有意に高値であった. 片麻痺群における麻痺側, 非麻厚側の各測定値の差異は, TH, OH, iSO2, 周径率で非麻痺側が有意に高値を示し, DOHは有意差を認めなかった. 〔考察〕今研究の結果より, 活動性の低下により非麻痺側OH, iSO2, 周径率は低下傾向を示し, 麻痺側, 非麻痺側との比較においても, DOH以外の全ての測定項目で有意に麻痺側が低下していた. これは, 活動性の低下が非麻痺側下肢筋酸素動態に影響を及ぼし, 麻痺側においては, 運動機能障害による筋収縮活動の質的変化と量的な減少が筋萎縮と共に筋の酸素需要量の低下が生じ, 毛細血管量の減少のためOH, iSO2が低下するものと考えられた.
ISSN:0289-3770