脳卒中片麻痺患者の肩関節屈曲時における肩甲骨と上腕骨の関係

【はじめに】脳卒中片麻痺患者において筋緊張の不均衡は肩甲上腕リズムを障害し, 他動運動の際など保護的反応が不十分なため, 軟部組織の一部が容易に損傷されやすいと考えられている. 今回我々は背臥位における, 肩甲骨と上腕骨の関係について3次元CTを用いて検討したので報告する. 【対象と方法】対象は当院入院及び通院加療中の肩関節に可動域制限及び痛みを有さない脳卒中片麻痺患者12名(男9名・女3名, 平均年齢59.4±8.2歳, BrunnstromstageII1名・III5名・IV4名・V2名)であった. 方法は背臥位にて他動的に肩関節屈曲150°位を保持し, (1)胸壁上での前額面における肩甲...

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Veröffentlicht in:理学療法学 1999, Vol.26 (suppl-1), p.18-18
Hauptverfasser: 吉川浩幸, 新田訓子, 三宅隆広, 吉良央子, 和田紀子, 平山美佳, 龍神幸明, 久保謙二, 前島伸一郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】脳卒中片麻痺患者において筋緊張の不均衡は肩甲上腕リズムを障害し, 他動運動の際など保護的反応が不十分なため, 軟部組織の一部が容易に損傷されやすいと考えられている. 今回我々は背臥位における, 肩甲骨と上腕骨の関係について3次元CTを用いて検討したので報告する. 【対象と方法】対象は当院入院及び通院加療中の肩関節に可動域制限及び痛みを有さない脳卒中片麻痺患者12名(男9名・女3名, 平均年齢59.4±8.2歳, BrunnstromstageII1名・III5名・IV4名・V2名)であった. 方法は背臥位にて他動的に肩関節屈曲150°位を保持し, (1)胸壁上での前額面における肩甲骨の外方移動(肩甲棘三角内側緑と椎体中央との距離)(2)胸壁上での水平面における肩甲骨の外方移動(水平面において椎体中央と胸骨中央を結ぶ線と肩甲骨下角と胸骨中央を結ぶ線のなす角)(3)肩甲骨の上方回旋(脊柱軸への垂線と肩甲棘のなす角)(4)肩甲上腕関節の動き(上腕骨軸と肩甲骨のなす角)をCTにて3次元化を行い計測し, 比較検討した. 【結果】(1)胸壁上での肩甲骨の外方移動については, 前額面では麻痺側が66.6±8.0mm・非麻痺側が76.2±4.0mmで, いずれの症例においても麻痺側が非麻痺側に比べ動きが制限されていた. (2)水平面においても前額面同様, 麻痺側が50.8±2.5°・非麻痺側が55.8±1.8°と麻痺側が非麻痺側に比べ動きが制限されていた. (3)肩甲骨の上方回旋については, 麻痺側が非麻痺側に比べ過度な動きを示す症例と動きが制限されている症例の双方が見られた. (4)肩甲上腕関節の動きについては, 麻痺側が147.3±2.3°非麻痺側が144.2±2.5°といずれの症例においても麻痺側が非麻痺側と比べ過度な動きを示していた. 【考察】1934年Codmanが肩甲上腕リズムの概念を発表し, その後も諸家により検討されてきた. 片麻痺の肩関節については, 野村らによると他動的な肩関節外転時の肩甲上腕関節と肩甲骨の動きについて検討し, 痛みがある場合肩甲上腕関節の動きは50°~70°で止まる傾向があり, 痛みがない場合でも100°以上では健側に比べ肩甲骨が過度に動いていると報告されている. しかし我々の肩関節屈曲時の結果において胸壁上での肩甲骨の外方移動の動きが制限され, 肩甲上腕関節において過度な動きを示していた. このことは, 肩関節に関節可動域制限や痛みがないことより保護的な収縮が出現したとは考えにくく, 臨床上言われているように肩複合体に関わる筋の中枢性麻痺による筋緊張の異常や, 軟部組織の緊張の異常により肩甲上腕リズムが妨げられているということと一致していると考えられる. 以上より, 今回の研究は静的なものであり動的な計測も必要であると思われるが, CTで3次元化することにより具体的に表すことの難しかった肩甲骨の位置を明らかにすることができ, 肩関節の他動運動を行う際, 肩甲骨の動きに十分な配慮が必要であると言うことを客観的に示すことができた.
ISSN:0289-3770