治療効果の考え方

臨床医学の営みは大まかに診断と治療に分けることができる. このうち診断は雑多な現象の中から共通項を選び出してcategory化する作業であるのに対し治療の方はそれをもう一度個々の患者に還元する-individualizationの作業である. 認識論と制御論といってもいい. いうまでもなく後者の方がはるかに困難であることを覚悟しなくてはならない. われわれはともすれば診断が明らかになれば治療はおのずから可能であるかのように思い込み勝であるがこれは20世紀初までの感染症の時代に培われた思考習慣であって今日にはあてはまらないのである. 治療学, それ自身の体系の確立, 方法論の開拓が行われなくては...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:理学療法学 1986-04, Vol.13 (2/3), p.91-96
1. Verfasser: 砂原茂一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:臨床医学の営みは大まかに診断と治療に分けることができる. このうち診断は雑多な現象の中から共通項を選び出してcategory化する作業であるのに対し治療の方はそれをもう一度個々の患者に還元する-individualizationの作業である. 認識論と制御論といってもいい. いうまでもなく後者の方がはるかに困難であることを覚悟しなくてはならない. われわれはともすれば診断が明らかになれば治療はおのずから可能であるかのように思い込み勝であるがこれは20世紀初までの感染症の時代に培われた思考習慣であって今日にはあてはまらないのである. 治療学, それ自身の体系の確立, 方法論の開拓が行われなくてはならないのである. 一体治療とは具体的に何であるか. 治療が可能となるためにはその基本に自然治癒過程を想定しなくてはならない. つまり治療とは自然治癒過程を妨げている条件を排除し, あるいは治癒過程自身を促進する作業であるといっていいであろう. 大正の初め内科学会の特別講演で賀屋隆吉は“肺結核の自然療法と腕力療法”ということを論じたが自然過程を力ずくで捲じ曲げる治療法はほとんど存在しない. しかしこの場合治療を局所的に限定して考えるべきではない. 人間は平時は生理的機能の25%を動員して生活しているといわれるから代償機能の増進ということはとくにRH医学では重要視されなくてはならない. なお治療の特殊なパターンとして癌などの場合の切除療法と移植外科から補装具に至る代用療法ともいうべきジャンルが存在することを付け加えておかねばならない.
ISSN:0289-3770
DOI:10.15063/rigaku.kj00003124964