3 集合性歯牙腫により下顎左側乳犬歯が埋伏した1例

【緒言】永久歯の萌出遅延は日常臨床でしばしば遭遇し, その原因としては, 先行乳歯の外傷や根尖性歯周炎, 嚢胞, 腫瘍, 元々の歯胚の位置異常などがある. しかし, 永久歯に比べて, 乳歯の萌出遅延や埋伏症例の報告は少ない. 今回我々は, 集合性歯牙腫が原因で下顎左側乳犬歯が埋伏した症例を経験したので報告する. 〈症例〉【初診】2008年6月25日, 4歳2か月, 男児. 【主訴】下顎左側乳犬歯が萌出してこないとのことで, 開業医より精査のため来院した. 【治療経過】口腔内診査で, [C]萌出相当部歯槽堤の頬側歯肉粘膜に膨隆が認められた. 不協力だったため, 来院当日はデンタル型エックス線写真...

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Veröffentlicht in:小児口腔外科 2010, Vol.20 (1), p.68-69
Hauptverfasser: 島田幸惠, 松永拓, 冨永真澄, 山下一恵, 宮内康範, 堀正美, 入江太朗, 立川哲彦, 井上美津子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【緒言】永久歯の萌出遅延は日常臨床でしばしば遭遇し, その原因としては, 先行乳歯の外傷や根尖性歯周炎, 嚢胞, 腫瘍, 元々の歯胚の位置異常などがある. しかし, 永久歯に比べて, 乳歯の萌出遅延や埋伏症例の報告は少ない. 今回我々は, 集合性歯牙腫が原因で下顎左側乳犬歯が埋伏した症例を経験したので報告する. 〈症例〉【初診】2008年6月25日, 4歳2か月, 男児. 【主訴】下顎左側乳犬歯が萌出してこないとのことで, 開業医より精査のため来院した. 【治療経過】口腔内診査で, [C]萌出相当部歯槽堤の頬側歯肉粘膜に膨隆が認められた. 不協力だったため, 来院当日はデンタル型エックス線写真を撮影したが, [C]の周囲に集合性歯牙腫の一部が確認できた. しかし, 集合性歯牙腫の範囲が大きいと思われたため, 患児の協力状態が改善される時期を待ち, 4歳4か月時にCBCT検査により精査を行った. 【CBCT検査結果】[C]は埋伏し, [C]の歯冠上部と[2]の歯冠を覆い, また[D]近心歯根部約1/2部まで及ぶ集合性歯牙腫が認められ, その影響で[1]は捻転していた. 患児の協力状態, 手術範囲を考慮し, 4歳6か月時に全身麻酔下で歯牙腫摘出術を行った. 歯牙腫と[C]の歯頸部が結合していたため, [C]の摘出も行った. [2]の歯胚を歯牙腫で覆っていたため, 細心の注意を払い歯牙腫を摘出し, 5歳時に可撤保隙装置を装着し, 現在に至っている. 【考察】1988年の日本小児歯科学会のデータによると, 下顎乳犬歯の萌出時期は, 1歳7か月頃である. 下顎第1乳臼歯が1歳5か月頃に乳犬歯より先に萌出するため, たとえ乳犬歯萌出が遅延しても, 保護者もあまり気にならず過ごしてしまう可能性が高いと思われる. また, 1歳代であるとエックス線写真撮影を行わないで経過観察される場合も多い. しかし, 今回のように, 歯牙腫のため埋伏する可能性もあるので, 少なくとも第2乳臼歯が先に萌出し, 乳犬歯が萌出してこない場合にはエックス線検査の必要性が示唆された. また, 乳歯が埋伏している場合には, 隣接する永久歯胚の発育状態を考慮し手術を行う必要性があると思われる.
ISSN:0917-5261