小児の下顎骨に発生した単純性骨嚢胞の1例

単純性骨嚢胞は, 一般に上腕骨, 大腿骨, 脛骨などの長管骨に好発する単胞性進行性の空洞化病変であり, 顎骨に発生することは稀である. 本疾患の発生由来の詳細は明らかにはなっていないが, 外傷性の血腫由来との説がある. 今回演者らは小児の下顎骨に発生した巨大な単純性骨嚢胞の1例を経験したのでその概要を報告した. 患者は12歳の男児で, 右側頬部の腫脹を主訴に, 当科関連病院を受診し, パノラマX線写真上, 下顎骨に大きな透過像を認めたため, 平成6年6月28日当科を紹介され受診となった. 外傷の既往はなく, 全身所見においても特記事項はなかった. 口腔外所見では, 顔貌左右非対称でオトガイ部よ...

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Hauptverfasser: 金森栄治, 稲見健一郎, 福井朗, 成田明子, 古川雅子, 高田啓子, 木村博人
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:単純性骨嚢胞は, 一般に上腕骨, 大腿骨, 脛骨などの長管骨に好発する単胞性進行性の空洞化病変であり, 顎骨に発生することは稀である. 本疾患の発生由来の詳細は明らかにはなっていないが, 外傷性の血腫由来との説がある. 今回演者らは小児の下顎骨に発生した巨大な単純性骨嚢胞の1例を経験したのでその概要を報告した. 患者は12歳の男児で, 右側頬部の腫脹を主訴に, 当科関連病院を受診し, パノラマX線写真上, 下顎骨に大きな透過像を認めたため, 平成6年6月28日当科を紹介され受診となった. 外傷の既往はなく, 全身所見においても特記事項はなかった. 口腔外所見では, 顔貌左右非対称でオトガイ部より右側下顎角部にかけて膨隆を認めていた. 口腔内所見では右側切歯及び臼歯の歯槽部に骨様硬の膨隆を認め, 骨欠損は認められなかった. パノラマx線写真上, 7|4の骨体部に, 帆立貝状, 境界明瞭な2房性を思わせるX線透過像を認め, X線CT画像においても同部にlow densityな部分が示されていた. MRIのT1強調画像においても同部は信号強度が増強された像を示していた. 初診時, 試験穿刺を行い, 内溶液を約18ml採取し, 血液学的, 生化学的分析を行ったところ単球の分画比やアルカリフォスファターゼなどが高値を示していた. 平成6年7月19日開窓術を施行したところ内部は空洞で, 非薄な嚢胞壁一層を認め, その病理組織学的所見は肉芽組織であった. その後, 開窓部より生検を行うも結果は同様であった. 以上より, 最終的に単純性骨嚢胞と診断した. 術後, 経過は良好で, 嚢胞周囲骨の増生は極めて速く, 嚢胞腔は著明に縮小した.
ISSN:0917-5261