小児の下唇から齦唇移行部に発生した神経鞘由来腫瘍の1例

口腔の神経組織由来腫瘍は比較的まれである. 今回, 小児の下唇相当の齦唇移行部に発生し, 病理組織診断の確定が困難であった1例を経験したのでその概要を報告した. 患者(女児, 9歳)の初診は平成7年8月で, 既往歴, 家族歴に特記事項はなかった. 初診5か月前から左側下唇から齦唇移行部粘膜下にわたり発生した腫瘤と摂食時痛を自覚していたが, 腫瘤が消失しないため某歯科から, 当科を紹介された. 1~4相当の下唇内面から齦唇移行部に2×1×0.8cm大の境界明瞭で弾性硬の長楕円形の腫瘤を認めた. 被覆粘膜は正常の色調と表面状態であったが, 軽度の圧痛があった. また, 全身皮膚にはミルクコーヒー色...

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Hauptverfasser: 東森秀年, 藤岡忠良, 是永佳成, 中島英元, 石川武憲
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:口腔の神経組織由来腫瘍は比較的まれである. 今回, 小児の下唇相当の齦唇移行部に発生し, 病理組織診断の確定が困難であった1例を経験したのでその概要を報告した. 患者(女児, 9歳)の初診は平成7年8月で, 既往歴, 家族歴に特記事項はなかった. 初診5か月前から左側下唇から齦唇移行部粘膜下にわたり発生した腫瘤と摂食時痛を自覚していたが, 腫瘤が消失しないため某歯科から, 当科を紹介された. 1~4相当の下唇内面から齦唇移行部に2×1×0.8cm大の境界明瞭で弾性硬の長楕円形の腫瘤を認めた. 被覆粘膜は正常の色調と表面状態であったが, 軽度の圧痛があった. また, 全身皮膚にはミルクコーヒー色様斑や多発性腫瘤などの異常所見は認めなかった. 下唇では極めて希有ではあるが多形性腺腫や, 腺性口唇炎などを臨床的に疑い, 局麻下で摘出した. 周囲組織と腫瘤の境界は明瞭で, 一塊として容易に摘出できた. 摘出物は弾性硬で割面は黄白色で, 充実性であった. 組織像では, 明らかな被膜は認められず神経線維束様構造がみられた. 全体に細胞境界の不明瞭な紡錘形細胞が充実性に増殖していたが, 腫瘍細胞は膠原線維を介在して分布する部位と束状に配列する部位とが混在していた. 免疫染色では, NSE, S100, vimentinなどが陽性であった点から神経線維腫が考えられた. しかし, 本例は細胞成分に富み, クロマチンの豊富な大型の細胞核がみられたこと, また核分裂像が比較的多い点から悪性も疑われた. 本学病理医が日本病理医協会ヘコンサルトした結果, “peripheral nerve sheath tumor(low-grade)”が疑われるとの回答を得た. また同会中国四国支部交見会では, 病理医78名中69名が神経腫瘍と診断し, その内38名が悪性例と診断した. 術後1年を経た現在, 再発などの異常徴候はないが, 経過観察を要する例と考えている.
ISSN:0917-5261