外傷に起因した顎関節強直症の一例

顎関節強直症は, 顎関節部に器質的変化が生じ, 下顎頭と関節窩が線維性または骨性に癒着し, 著しい開口制限または下顎の不動化を来した状態を示す疾患であり, 主な原因は顎関節部あるいはその周囲の炎症と外傷によるものといわれている. 今回我々は下顎骨関節突起骨折に起因した顎関節強直症の一例に遭遇し治療を行う機会を得たのでその概要を報告した. 患者:8歳11ケ月男児 初診:昭和60年8月6日 主訴:開口障害 現病歴:昭和59年12月28日(8歳3ケ月)交通事故にて, 頭部打撲, 外傷性クモ膜下出血, 両側下顎骨関節突起骨折, 下顎正中部骨折, 上顎右側中・側切歯歯牙脱臼をおこし, 某病院にて下顎骨骨...

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Veröffentlicht in:小児口腔外科 1992, Vol.2 (1), p.96-97
Hauptverfasser: 畦平一郎, 大塚泰文, 松村智弘
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:顎関節強直症は, 顎関節部に器質的変化が生じ, 下顎頭と関節窩が線維性または骨性に癒着し, 著しい開口制限または下顎の不動化を来した状態を示す疾患であり, 主な原因は顎関節部あるいはその周囲の炎症と外傷によるものといわれている. 今回我々は下顎骨関節突起骨折に起因した顎関節強直症の一例に遭遇し治療を行う機会を得たのでその概要を報告した. 患者:8歳11ケ月男児 初診:昭和60年8月6日 主訴:開口障害 現病歴:昭和59年12月28日(8歳3ケ月)交通事故にて, 頭部打撲, 外傷性クモ膜下出血, 両側下顎骨関節突起骨折, 下顎正中部骨折, 上顎右側中・側切歯歯牙脱臼をおこし, 某病院にて下顎骨骨折に対し顎間固定をうけた. 退院後自宅にて開口訓練を行っていたが開口量改善なく, 当科を受診した. 現症:開口量は16mm, 下顎運動時, 顎関節部に鈍痛ならびに捻髪音を認めた. 処置及び経過:当科初診時でのレントゲン写真では骨性癒着は明らかでなかった為, 約3年間, 咬合挙上板の使用ならびに開口訓練による改善を試みたが, 開口量は16mmのままであった. マンディブラキネジオグラフ(MKG)では不定な下顎運動が認められ, CT写真において左側顎関節部の外側に骨様組織の増生を疑わす不透過像を認め, 関節頭部は双頭状を呈し癒着が考えられた為, 昭和63年12月, 全麻下にて左側顎関節授動術を施行した. 術後2日目から開口訓練を開始し, 術後15日目には開口量は30mmに改善された. 術後1年目, 顎運動の改善は認められたものの咀嚼機能は不安定であった. その後, 前歯補綴治療ならびに矯正治療を併行し, 術後2年目では開口量は37mmとなり咀嚼機能も改善が認められた.
ISSN:0917-5261