環境監視モニターとしての余剰麻酔ガス濃度監視が有用であった一事例

1. はじめに 1997年の地球温暖化防止のための京都会議では, 重要ガス指標の一つに亜酸化窒素(N_2 O)も取り上げられている. 20世紀に開発された吸入麻酔剤の中では最も息長く先進国で普及し, 評価されているN_2 Oではあるが, 麻酔医療の面では未処理大気放棄は大気汚染の点から考え直す時期に来ている. 既にいくつかの施設でN_2 Oの余剰ガス濃度連続測定が, 中央監視システムに取り入れられている. 当院手術部も, 平成12年度に新手術部の着工が予定されている. その中で, 集中監視項目の一つに余剰麻酔ガス濃度(N_2 O, イソフルレン, セボフルレン)を組み入れる計画をしている. 今...

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1. Verfasser: 滝 和美
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:1. はじめに 1997年の地球温暖化防止のための京都会議では, 重要ガス指標の一つに亜酸化窒素(N_2 O)も取り上げられている. 20世紀に開発された吸入麻酔剤の中では最も息長く先進国で普及し, 評価されているN_2 Oではあるが, 麻酔医療の面では未処理大気放棄は大気汚染の点から考え直す時期に来ている. 既にいくつかの施設でN_2 Oの余剰ガス濃度連続測定が, 中央監視システムに取り入れられている. 当院手術部も, 平成12年度に新手術部の着工が予定されている. その中で, 集中監視項目の一つに余剰麻酔ガス濃度(N_2 O, イソフルレン, セボフルレン)を組み入れる計画をしている. 今回はN_2 O持続濃度監視の機器による測定の試験を行った際, 偶然, 「麻酔器始業点検表」にない部所を発見したので, その詳細を報告する. 2. 試験対象・実施 当手術部No.8 No.9 No.12の各手術室の排気口上端部(床上80cm)に吸引チューブの先端を設置し, 対照として廊下中央の床上80cmに一ヵ所吸引チューブを設置した. N_2 O連続測定には, N_2 Oガス分析器Model STR-100V(ベスト測器製)を使用し, 午前8時30分より午後6時まで測定した. 当日No.8の手術室ではN_2 O・セボフルレン・酸素マスク麻酔下の鼡径ヘルニア根治術(40分間), N_2 O・セボフルレン・酸素挿管麻酔下の肝臓生検(30分間), 空気・酸素・プロポフォール・フェンタニール麻酔下(N_2 O未使用)の胃切除術(3時間30分間)の3例の手術が行われた. No.10の手術室では, 持続硬膜外麻酔併用で空気・酸素・プロポフォール・フェンタニール麻酔下(N_2 O未使用)のY型人工血管置換術1例(7時間20分)が行われた. No.12の手術室では, 空気・酸素・フェンタニール麻酔下(N_2 O未使用)で心膜剥離術と三尖弁形成術の1例(6時間40分)が行われた. 同日, 他の手術室6室が午前8時30分から12時頃まで稼動しており, 内5室でN_2 Oが使用されていた. 3室の麻酔科医は各々午前8時から8時30分までの間に, 「麻酔器始業点検表」に沿って医療ガス配管・補助ボンベ内容・供給圧計・流量計などを確認した. この時点で目視できる範囲のガス配管及び麻酔器のガス漏れ及び麻酔回路のガス漏れも確認されていなかった. 3. 測定結果 測定中, No.10とNo.12の手術室ではN_2 O未使用のため, N_2 Oの配管は取り付けてあったが測定値は0ppmであった. 廊下中央での測定も, 当日9室稼動中6室にてN_2 Oが使用されていたが, No.8のマスク麻酔以外は挿管麻酔で余剰麻酔ガスが全て吸引排気されている為, 測定中0ppmであった. No.8の手術室では, 1例目マスク麻酔中10~40ppm, 最高44.6ppmを測定した. 3例目の手術ではN_2 Oを使用していないにもかかわらず10~40ppmの測定値が続き, 麻酔終了後, 医療ガス配管を外し片付けたところ, 測定値が0ppmとなった. 4. 考察 中央配管パネル部と麻酔器コネクタ部では, 手で触れたり音で聴取できる漏れは無かった. 発泡剤にて中央配管パネル部から耐圧管・麻酔器コネクタ部までの漏れを検査した所, 麻酔器から耐圧管につないだコネクタ部のかしめの部分にガス漏れを発見した. 当手術室では, 既製麻酔器の耐圧管が中央配管口まで届かないため, 3mの延長耐圧管をNo.7, No.8, No10, No.11, No.12, No.13の各手術室で使用している. 早速金属のかしめを締め直した所, 漏れは止まった. もちろん, 測定値は0ppmで漏れは感知しなかった. 圧力計への影響が出たり, 漏れの音を聴取したり, 手で触れて分かるガス漏れは点検表に沿ったチェックで判断が可能である. しかし, 今回のようにチェックリストに耐圧管のコネクタ部は入っておらず, ガス漏れは音も聴取できず, 触知不可能の微量であった. このようなガス漏れに, 図らずも持続N_2 O連続測定の有用性を再認識した. 人工環境とも言える手術室内での麻酔ガスは適正に使用せねばならず, 余剰ガスの連続監視はガス漏れの人体暴露を防ぐ意味からも必要なことではあるが, 次のステップとして大気中へ放棄しているN_2 Oの処理も考えねばならないと痛感し, 工学部高温エネルギー変換研究センターと処理についての共同研究を計画している. 5. まとめ N_2 Oガス分析計(Model SIR-100V)による連続測定中, 偶然にも微量のN_2 Oガス漏れを検出し得た. 麻酔始業点検項目で医療ガス配管設備のチェックが項目として入っているが, 供給圧の低下・音の聴取・触知などで判断できないもののガス漏れを確認するのは困難であり, 余剰ガス連続測定監視は手術室内の環境管理上からも有用である. さらに, 地球温暖化予防のためには, N_2 Oの処理対策にも目を向けることが必要である.
ISSN:0385-440X