電気メス対極板, ユニバーサルプレートの高周波電流による皮膚温度上昇の検証

1. はじめに 電気メスの対極板に関して, 高周波電流が容易に分散され, さらに装着面積も縮小型に改良化された対極板が近年市販されつつある. そこで, この改良型対極板が従来型に比べて, (1);高周波電流による皮膚温度上昇が安全範囲に保たれているか, (2);高周波分散が確実に行われているかなどを検討すべく, 一般に使用されているサーモグラフィー装置等を利用して試験を行うこととした. その結果, いくつかの新知見を得たので報告する. 2. 対象と方法 比較した対極板を図1に示すが, 対極板Aは従来北大手術部で使用してるもので, 対極板Bが改良型のユニバーサルプレート(3M社製)である. 図中...

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Hauptverfasser: 竹田博明, 深瀬 聡, 熊谷重俊, 佐藤直樹, 岡村 篤, 大沢修子, 和田龍彦
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:1. はじめに 電気メスの対極板に関して, 高周波電流が容易に分散され, さらに装着面積も縮小型に改良化された対極板が近年市販されつつある. そこで, この改良型対極板が従来型に比べて, (1);高周波電流による皮膚温度上昇が安全範囲に保たれているか, (2);高周波分散が確実に行われているかなどを検討すべく, 一般に使用されているサーモグラフィー装置等を利用して試験を行うこととした. その結果, いくつかの新知見を得たので報告する. 2. 対象と方法 比較した対極板を図1に示すが, 対極板Aは従来北大手術部で使用してるもので, 対極板Bが改良型のユニバーサルプレート(3M社製)である. 図中, 対極板Bの矢印部全域が導電性部分で, 高周波電流を分散させやすくなっている. また, 装着面積も対極板Aに比べて約2/3に縮小化されている. 試験方法についてはアメリカ医科器機振興協会(AAMI)の試験法を用いて, 以下の内容を基盤として行った. (1)被験者は成人男女各5名で, 試験の便宜上背中を対象部位とした. (2)室温や常時体温による相違を除き, 高周波電流のみによる温度変化を検出するため, 対極板装着後30分の安静時を設けた. (3)投与の高周波電流は700mAの切開電流(正弦波電流)を1分間流した直後に対極板を取り除き, 直ちにサーモグラフィで皮膚表面温度を測定した. (4)対象部位の温度測定は, その広がりを考慮して対極板面積の外周を1cmづつ拡大することにした. 測定構成を図2に示す. 被験者は腹臥位にて背中に測定用の対極板を, また下肢上部に電流回収用の対極板を貼り, それぞれは電気メス装置に接続される. サーモグラフィから得たデータはコンピュータを通して蓄えられる. 3. 実験と結果 男性の場合, 従来型の対極板Aでは5名中4名までが皮膚面積約50cm^2 にて0~1℃の温度上昇を示し, これ以上の温度上昇では面積がかなり減少してしまった. また, 3℃以上皮膚温度上昇のあった者はわずか1名で, その時の面積は45cm^2 であった. なお, 5.5℃以上温度上昇した者は皆無であった. 一方, 対極板Bに関しては, 皮膚面積約40cm^2 で0~3℃の温度変化で, また最高変化も2.5~5.5℃となり偏差も大きく, 個体差が生じた. これらの結果をまとめて図3に示す. 同様に女性対象群の結果を図4に示す. 女性対象群の測定結果, 対極板Aでは, 皮膚面積約60cm^2 で1℃の温度変化に止まった者は, 3℃以上の上昇部分がなかった. その他の被験者は2℃程度温度上昇した部分が大半で, 4.5℃以上上昇した例はなかった. 次に対極板Bについては, 0.5~3℃変化の部位がほとんどで, 5℃以上の変化部位を呈した被験者はなかった. サーモグラフィによる皮膚温度変化測定結果例を図5に示すが, 黒っぽい部分が0℃以下を, また白っぽい部分が2℃以上を表している. 電流は同図の対極板面から回収用電極板へと流れている. 図5の結果から, 対極板Aは下部右側に高い温度上昇を呈していることが分かる. 一方, 対極板Bは右側下部に若干温度上昇箇所があるものゝ, 電極外周に沿って温度上昇が全般的にあった. 4. 考察 従来型の対極板では, 温度変化(上昇)のまったく無かった部位が計測された. これは同一測定条件下(接着圧や緩衝剤塗布状態)でも一部に電流が流れなかった部分が存在していることを示しており, この部分的バラツキが場合によっては問題を起こしうることとなる. 一方, 対極板Bに関しては, 男女とも0~3℃の温度変化と, 個人差のあることが分かったが, 電極外周に沿った全般的な温度上昇があり, 高周波電流に対して分散効果あったと考えられる. さらに対極板Bは放熱しやすい表面構造(メッシュタイプ)で, 熱透過抵抗も25%であった. これらはメーカーの提示結果とほぼ同様の結果であったことを付記しておく. 5. おわりに 装着面が小さい対極板でも, いくつかの工夫を凝らしたユニバーサルプレートの優位な点が確認された. しかし, この面積の縮小限界やメッシュの細かさなどの検討については今後の課題としたい.
ISSN:0385-440X