Bio-Pumpを用いた体外循環下肝切除

はじめに 下大静脈へ浸潤した症例, 下大静脈内腫瘍栓を認める肝腫瘍に対する肝切除にはその安全性, 確実性からもhepatic vascular exclusion(以下, HVE)が必要になってくる. また, 巨大肝腫瘍のために肝脱転が困難で, 術中不慮の大出血が予想される症例において, その安全性からもHVE法の適応となる. このHVE法をより安全に行うためには体外循環回路を設置しなければならない. この回路にはBio-Pumpを使用することで血球破壊が少ないため肝への負担も軽減され, また装置が簡便のため使用しやすい. われわれは現在までに9例にBio-Pumpを使用したHVE法による肝切...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Hauptverfasser: 高野靖悟, 河野 悟, 高橋知秀, 大石 均, 岩井重富, 田中 隆
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:はじめに 下大静脈へ浸潤した症例, 下大静脈内腫瘍栓を認める肝腫瘍に対する肝切除にはその安全性, 確実性からもhepatic vascular exclusion(以下, HVE)が必要になってくる. また, 巨大肝腫瘍のために肝脱転が困難で, 術中不慮の大出血が予想される症例において, その安全性からもHVE法の適応となる. このHVE法をより安全に行うためには体外循環回路を設置しなければならない. この回路にはBio-Pumpを使用することで血球破壊が少ないため肝への負担も軽減され, また装置が簡便のため使用しやすい. われわれは現在までに9例にBio-Pumpを使用したHVE法による肝切除を施行してきたので, われわれの工夫を紹介する. 手術手技 皮膚切開はいわゆるMercedes切開で行う. 肝円索は後にcold perfusion in situのためにアトムチューブを挿入しておく. 尚, 術中管理を容易にするために末梢点滴ルートのほかに左内頚静脈よりIVH, 右内頚静脈からはSwan-Ganz catheter, 右鎖骨下静脈よりrapid infusion systemを設置しておく. Bio-Pumpによる体外循環回路は脱血路は右大腿静脈と下腸間膜静脈よりチューブを挿入しY字管に連結してBio-Pumpに送り左鎖骨下静脈に送血する. 肝門部操作により切除側の肝動脈・門脈を切離し, 肝冠状間膜, 三角間膜を可能なかぎり剥離しておき, 肝上部・下部下大静脈にテーピングする. 体外循環回路のカニュレーションではカニューレはCarmeda, Medtronic Bio-Medicus製を用いて右大腿静脈には23Fr., 左鎖骨下静脈は19Fr., 下腸間膜静脈は17Fr.のカニューレをそれぞれ挿入した. これらをBaxter製のnoneheparin coating tubeでBio-Pumpに連結した. Bio-Pump作動開始後, 肝十二指腸間膜をクランプ, 肝上部・下部下大静脈をクランプし, 肝冷却潅流のため4℃ラクテットリンゲル液を肝円索より流し, その流出路として肝下部下大静脈に切開を入れる. 肝切除は前方アプローチで行い, forcept fructure methodでグリソン, 肝静脈枝を結紮切離していく. 肝切除終了後は全てのクランプを解除して止血確認して回路を閉鎖し閉腹する. 対象 症例は肝細胞癌5例, 転移性肝癌2例, 肝海綿状血管腫1例, 最重傷型肝損傷1例で切除術式では右3区域切除2例, 拡大右葉切除5例, 右葉切除1例, 肝損傷には中央2区域切除に下大静脈の修復を行った. 成績 Bio-Pump作動時間は平均63分(32分-117分), 出血量は平均3011ml(1562ml-7555ml), 術後合併症では最重傷型肝損傷は術後56日目に腎不全で死亡した. 他の症例は軽快退院したが, 腹水貯留が2例に認められ, 1例に下肢の浮腫が認められた. 考察 症例を重ねていくうちにいくつかの問題点を解決していった. まず第一に術中出血量が比較的多いことである. この原因にはいろいろ考えられるが, 体外循環回路により血液と異物との接触により凝固亢進がおき, 引き続いて線溶系の亢進が起きると考えられるが, さらに低体温, 長時間の手術などが関連していると思われる. このため術中低体温防止として上・下肢をアルミ薄で巻き, 送血回路に熱交換器を設置し, 回路をできるだけ短くした. また, 初期の症例では血栓形成予防にヘパリンの全身投与を行ったが, 術中出血量は多く, 最近の症例ではヘパリン投与は行わずNafamostat Mesilateを使用している1). 手術手技では下大静脈に置いた潅流液の排泄孔からTVEにもかかわらず症例によっては出血をみることがある. このような症例は横隔静脈が肝部下大静脈の背側に流入しているもので注意を要する2). また, 術後高ビリルビン血症が発生したが, この原因は体外循環のための溶血と考えられるが, ほぼ1週間後には2mg/dl以下に減少していた3). 合併症に腹水貯留と下肢の浮腫が認められたが, これらは術中の過剰輸液が考えられた. また, 腎不全の死亡例は外傷により術前約10,000mlの出血が原因と考えられた. まとめ Bio Pumpを使用したHVE法による肝切除手技の工夫と合併症について検討した. 文献 1)高橋知秀, 高野靖悟, 大石 均ほか:抗凝固抗線溶目的にnafamostat mesilate(FUT)を使用した体外循環下肝切除術の1例, 日臨外医会誌, 56:589-593, 1995 2)高野靖悟, 高橋知秀, 大石 均ほか:Bio Pumpを使用したhepatic vascular exclusion法による肝切除法, 手術, 49:1095-1099, 1995 3)高野靖悟, 高橋知秀, 関 訓芳ほか:Bio Pumpを使用したhepatic vascular exclusion法による巨大肝細胞癌4切除例の経験, 日消外会誌 27:2446-2450, 1994
ISSN:0385-440X