内視鏡手術器械の運用方法
はじめに 当手術部において内視鏡手術機器は, 中央材料部での滅菌処理以外に, 手術部内の滅菌精製水で洗浄後, 常温常圧下のEOG滅菌, もしくはホルマリンBOXによるホルマリンガス消毒の後, 保管運用されている. 緊急時や定期手術予定の都合により, 液状薬剤による薬液消毒のみで使用されることもある. しかし, 一般に内視鏡及び処置具の使用後の洗浄, 消毒, 滅菌方法は標準化されたマニュアルは無いのが現状であり, その方法が妥当であるか否か苦慮している. 手術部内で従来行ってきた消毒, 滅菌方法では, 患者や医療従事者に対する為害作用, 滅菌効果の保証の疑問, また滅菌装置周辺環境の汚染など,...
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Zusammenfassung: | はじめに 当手術部において内視鏡手術機器は, 中央材料部での滅菌処理以外に, 手術部内の滅菌精製水で洗浄後, 常温常圧下のEOG滅菌, もしくはホルマリンBOXによるホルマリンガス消毒の後, 保管運用されている. 緊急時や定期手術予定の都合により, 液状薬剤による薬液消毒のみで使用されることもある. しかし, 一般に内視鏡及び処置具の使用後の洗浄, 消毒, 滅菌方法は標準化されたマニュアルは無いのが現状であり, その方法が妥当であるか否か苦慮している. 手術部内で従来行ってきた消毒, 滅菌方法では, 患者や医療従事者に対する為害作用, 滅菌効果の保証の疑問, また滅菌装置周辺環境の汚染など, いくつかの問題が提起される. さらに, 微細, 多種にわたる機器の維持管理が十分に行えていない, という現実も浮かび上がっている. そこで今回, 強酸性水による洗浄と加温, 大気圧下ホルマリン滅菌装置を使用しての滅菌方法を採用し, 滅菌精製水による洗浄と通常の中央材料部におけるEOG滅菌の方法と比較検討し, 滅菌コンテナシステムによる管理運用を試みた. I. 当手術部における内視鏡手術の現状 当手術部において, 各診療科における内視鏡下手術の比率は年々増加し, 平成7年度は, 総手術件数2888症例のうち357症例(12.3%)を占め, 前年度比で3.4%の増加が見られる. 各診療科別の手術件数を比較すると, その割合は図1に示す通りである. 内視鏡下手術に使用される機器も表1に示す通り各診療科の用途に合わせた多種多様な機器が導入されており, 手術際しては, 術中の機器の破損や管理上のトラブルによって手術進行に支障を来たさないように, 内視鏡機器を2セット以上常備している. しかし, 手術件数増加に伴う内視鏡機器の使用頻度に比べ, その絶対数が不足している. さらに当施設の中央材料部では, 夜間のEOG滅菌を行っていないため, 手術部内において, 滅菌, 消毒を行わなければならない場合もある. II. 調査対象と方法 採取した検体は, 全てセプティチェック BHI (BHL)に入れ, 7日間好気的に37 III. 結果 洗浄後の陽性の検体からは, A法ではPs eudomonas属, コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が, B法ではCNSが検出され, B法による滅菌後の陽性検体からもCNSが検出された. IV. 考察 今回, 近年微生物に対し比較的強い殺菌力を有し, 人体に対しては有害な作用が少ないとされている強酸性水による内視鏡機器の洗浄を試みた. その結果, 約半数近くに不完全な洗浄によるものと, 検体のサンプリング時の汚染によるものと思われる菌の発育が確認されたが, 後で行ったホルマリン滅菌装置による滅菌と中央材料部によるEOG滅菌処理との比較では有意の差は認めなかった. 強酸性水を用いて十分な洗浄を行えば液状薬剤による洗浄は必要なく, その残留による人体への為害作用を回避できると考えた. さらに, 強酸性水による洗浄とホルマリン滅菌装置の併用により, 内視鏡機器に対する良好な滅菌効果が得られた. 今回使用したホルマリン滅菌装置は, 滅菌槽内の中和行程後の残留CH_2 Oガス濃度は, 1ppm以下, 中和剤のNH_3 濃度は, 第2次中和処理後検出限界以下(25ppm)であり, 作業環境に与える影響は少ないという報告もあることから, 残留排気ガス, 環境汚染等の問題もクリア出来ていると考えられた. これまで滅菌バッグと, ホリマリンBOXに分散して管理していた内視鏡機器も, 滅菌コンテナシステムを使用することにより, 各診療科別に光学視管, ファイバーライトケーブル, CCDカメラ, 処置具等をセット化することが可能となった為, 機器の個別保管による散逸, パッキング不完全等のトラブルも減少し, 業務の省力化が図れた. 今回採用し評価を行った強酸性水による洗浄と, ホルマリン滅菌装置及び, 滅菌コンテナ使用による洗浄滅菌システムにより, 良好な滅菌, 省力化, セット化による集中管理が可能となり, 今後当手術部で円滑な管理運用が図られることが期待できる. 我々の行った検討結果が, 内視鏡機器の洗浄, 消毒, 滅菌作業の標準化に向けて, 一つの指針を示すと思われるが, 今後残留病原微生物等の媒介による感染の防止について, 検討を加える必要があると考えている. V. まとめ 1. 当施設で, 強酸性水とホルマリン滅菌装置の併用により, 良好な滅菌効果が得られた. 2. 薬液消毒を極力忌避する事で, 患者に対する残留薬物の影響を防止出来た. 3. 作業環境への悪影響の防止 4. 滅菌コンテナシステム使用による無菌的維持管理により, 業務が省力化された. 引用・参考文献 1)古橋正吉:大気圧下ホルムアルデヒドガス滅菌法の研究, 医器学, 62(3):107-111, 1992. 2)新太喜治:滅菌・消毒の新しい技術, 手術医学. 16(1):65-67, 1995. |
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ISSN: | 0385-440X |