(1) 血液ガス測定用採血キットでの抗凝固薬の違いによる測定値への影響について

〔目的〕市販される測定用採血キットはあらかじめ抗凝固薬が封入されているが, その量と使用薬剤の種類は異なる. そこでいくつかの市販される測定用採血キットを使用し, それらが測定値に対しどの様に関与するかを検討した. 〔方法〕市販される測定用採血キットはQS-90(ラジオメータ社：QS), プレザパック2(テルモ社：P2), クイックライト(チバコーニング：QR)の3種である. 使用する抗凝固薬はそれぞれ, 凍結乾燥バランスヘパリン・120u, ヘパリンリチウム・125u, ヘパリンリチウム・7uである. さらに, ヘパリンナトリウム(清水製薬)にて内筒を濡らした2.5mlのディスポシリンジ(HS)を追加した. 対照として抗凝固薬を含まない5mlノーマルシリンジを用いた. 対象は健常人および本学腎センターにて慢性透析中の患者であり, 採血量は3mlとした. 血液ガス分析装置はコーニングおよびラジオメータ社を, 電解質分析装置はノバ社およびラジオメータ社を使用した. 〔結果〕動脈血ガス分析ではpH, PCO_2 , PO_2 , HCO_3 に各シリンジで差はなかった. 電解質ではP2でノーマルシリンジに比べCaが低値を示し, QSとQRで差はなかった. ヘパリンナトリウムではNaの値が他のシリンジに比べ高値を, Caは低値を示した. 〔結語〕市販される血液ガス測定用採血キットの抗凝固薬の測定値に対する影響は, シリンジ内に封入される抗凝固薬の種類と量に影響された. プレザパック2ではナトリウムの測定値で全てのシリンジに比べ低値を, カルシウムで低値を示した. QSとQRでは対照と同様の値を示した. ヘパリンナトリウムでシリンジ内筒を濡らす方法による測定値ではNaの高値とCaの低値を認めた.