(36) ポリエステル長繊維手術ガウンの評価

これまで使用されてきた手術ガウンには, 未だ素材の特性より種々の問題が残されている. 最近, 帝人株式会社にて新素材ロータサイトが開発され, スポーツ衣料として広く利用されている. ロータサイトはコットンに比し軽く, 特に撥水性・防塵性に優れているとされている. そこで今回これを手術ガウンとして試作し, 洗浄・滅菌後の特性変化を測定した. 〔方法〕ロータサイト手術ガウンを1回, 10回, 20回, 50回洗浄・滅菌した後, 耐水圧・撥水性・透湿性・引き裂き強度につき検討した. また, 加工方法が一部異なったロータサイト手術ガウンを用い, 10回, 20回, 50回洗浄し, その後1回滅菌したガウンを試着して手術を行い, その使用感をアンケート調査した. 〔結果〕透湿性については50回の洗浄・滅菌まで劣化はみられなかった. 耐水性・撥水性・引き裂き強度では20回まで初期の特性を維持し得たが, 50回では低下がみられた. また, 試着時の血液に対する状況は, 1回洗浄・滅菌後では血液の表面付着はほとんど見られなかったが, 20回洗浄・滅菌では表面に一部血液の付着がみられた. これに対して50回洗浄・滅菌ではガウン裏面まで血液浸透がみられた. 使用感では室温の高いときには発汗から蒸れを感じたが, 室温が適切であると約5時間の手術でも快適であった. 〔考察〕ロータサイト手術ガウンは欧米では臨床に使用されている. 今回このロータサイト手術ガウンを検討したが, 測定結果は欧米での結果に比し低値を示した. これは洗濯条件・滅菌方法の相違によると考えられた. しかし, 使用感は総合的には軽くて作業がし易く, コットンに比し良好であるとの評価が得られた.