これからの医科器械に求められるもの

昨年の第23回日本医学会総会(京都)において, 転換期に立つ医学・医療が語られ, 調和と信頼の回復が強調されました. 今まさに21世紀を目前にし, これからの人間社会・医療の在り方を考えるうえで, 現在の医療技術・医科器械はこれで良いのだろうかと, 立ち止まって反省する機会が与えられました. 本来科学技術は人類の幸福に貢献するものと信じられてきましたが, その適用を誤れば人間社会に対して不幸をもたらすものであることが明らかになりました. 例えば地球環境の破壊や廃棄物公害は先進文明国に大きな責任がありますし, 今後ますます科学技術が発展すれば人類の生存を脅かす大問題になるかもしれません. 私達は...

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Veröffentlicht in:医科器械学 1992/04/01, Vol.62(4), pp.169
1. Verfasser: 新, 太喜治
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:昨年の第23回日本医学会総会(京都)において, 転換期に立つ医学・医療が語られ, 調和と信頼の回復が強調されました. 今まさに21世紀を目前にし, これからの人間社会・医療の在り方を考えるうえで, 現在の医療技術・医科器械はこれで良いのだろうかと, 立ち止まって反省する機会が与えられました. 本来科学技術は人類の幸福に貢献するものと信じられてきましたが, その適用を誤れば人間社会に対して不幸をもたらすものであることが明らかになりました. 例えば地球環境の破壊や廃棄物公害は先進文明国に大きな責任がありますし, 今後ますます科学技術が発展すれば人類の生存を脅かす大問題になるかもしれません. 私達は人類の幸福に連なると考えて医科器械の進歩発展に取り組んできましたが, この辺でじっくり考え直してみることも必要であると感じています. 医療の原点は申すまでもなく, 病める人や障害を持った人, さらに死に瀕している人に対する人間愛, 思いやりの心であり, 人命の尊重であり, 生命への畏敬の念であります. そこで医療の目的とするところは, 病める人を癒し, 病気になることを予防し, 人々の健康を増進させて, 人生の質を高め, 一人でも多くの人に天寿を全うさせることでありましょう. 近年のハイテクノロジーに支えられて, 医療の目的に使用される医科器械の進歩はまことに目を見張るものがあります. 本当に便利な時代になったものだと感心する反面, このままで良いのだろうかという一抹の不安に襲われます. 私達は最新の医科器械と最先端の医療システムが一堂に展示されるこの機会に, 一寸立ち止まって医療の原点に帰り, これからの医科器械の在り方についてみんなで考えてみることが必要でありましょう. このような反省の意味を込めて本大会のテーマを「21世紀をめざして医科器械に人の心を」とさせていただきました. これからの医科器械に求められるものは, 人命へのやさしさとおもいやりの心であるという観点から, 若干の私見を述べてみたいと思います.
ISSN:0385-440X
1881-4875
DOI:10.4286/ikakikaigaku.62.4_169