(70)サーンズ9000型人工心肺装置の使用経験

心臓外科の進歩と共に人工心肺装置も単なる循環代行としての機器ではなく, 拍動流送血など生理的な循環をめざした循環補助機構の搭載, ならびに体外循環を確実且つ安全に実施するための各種安全機構を組み込んだ装置としての開発がなされるようになってきた. 今回我々は, プラズマディスプレーを搭載し, 体外循環に必要な情報の表示およびタッチスクリーンによる様々な情報入力および制御操作を行うことのできるサーンズ社製9000型人工心肺装置を臨床使用する機会が得られたので報告する. 本装置の特徴は体外循環に要求されている要素を一体化してシステムとしてまとめあげられており, 拍動流送血システム, ガスブレンダー, 脱血流量制御用オクルーダーなどのほか, 送血ポンプと連動させ異常回路内圧や液面低下の場合にポンプを停止させることのできる回路内圧モニターシステム, バブルディテクター, レベルセンサーなどの安全機構や, 動脈ポンプと安全機構システムのみならず, 最大120分間作動させることのできるバッテリーパックが搭載され, 非常時電源についても考慮されている. また, 回転制御つまみ以外はすべてタッチスイッチとなっている. 特にローラーを回転させるためには同時に二つのスイッチを押さなければ作動しないなど安全な操作を考慮した装置となっている. また, CDIなど血液ガス自動分析装置のデータ表示がディスプレー上に表示が可能である. 本装置はやや大型の人工心肺装置となっているが, 実際の使用では問題にならず, 完成度の高い装置と思われた. 現在まで20例の体外循環に使用したが, 特に問題はなかった.