1.悪性腫瘍の顎骨転移によりオトガイ部の知覚鈍麻を訴えたnumb-chin syndromeの一症例

背景:歯科医師のもとへ訪れる患者には非歯原性疾患による顎顔面痛も少なくない. 非歯原性歯痛には抜歯による神経損傷, 帯状疱疹由来の三叉神経ニューロパシーがあげられるが, なかには全身疾患と関連する場合もありその鑑別は重要である. 三叉神経ニューロパシーは患者本人の感覚によるため, 客観的な所見に乏しく診断に難渋する場合もある. 今回我々はオトガイ部の痺れ, 痛みを主訴に受診した, 腫瘍の下顎骨転移が原因であったnumb-chin syndromeの一症例を報告する. 症例:69才男性. 左オトガイ部の知覚鈍麻, ピリピリ感を主訴に九州歯科大学病院歯科麻酔外来を受診した. 口腔内外の肉眼的所見,...

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Veröffentlicht in:日本ペインクリニック学会誌 2003, Vol.10 (4), p.531-531
Hauptverfasser: 坂本英治, 椎葉俊司, 今村佳樹, 坂本和美, 長畑佐和子, 仲西 修
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:背景:歯科医師のもとへ訪れる患者には非歯原性疾患による顎顔面痛も少なくない. 非歯原性歯痛には抜歯による神経損傷, 帯状疱疹由来の三叉神経ニューロパシーがあげられるが, なかには全身疾患と関連する場合もありその鑑別は重要である. 三叉神経ニューロパシーは患者本人の感覚によるため, 客観的な所見に乏しく診断に難渋する場合もある. 今回我々はオトガイ部の痺れ, 痛みを主訴に受診した, 腫瘍の下顎骨転移が原因であったnumb-chin syndromeの一症例を報告する. 症例:69才男性. 左オトガイ部の知覚鈍麻, ピリピリ感を主訴に九州歯科大学病院歯科麻酔外来を受診した. 口腔内外の肉眼的所見, パノラマレントゲン所見では明らかな異常は認められなかった. しかし定量的感覚検査で患者の訴えと一致した左オトガイ神経に限局した閾値上昇とAllodynia症状を認めた. しかし, 抜歯や帯状疱疹といった神経損傷を来す既往はなかった. 神経支配領域が下歯槽神経領域に限局していたため, 腫瘍の存在を疑い, 下顎骨体部のCT検査を行ったところ, 下顎孔付近に腫瘍様の陰影と骨の破壊像が認められた. この患者は既往歴として平成元年直腸癌, 平成12年前立腺癌があったため, 悪性腫瘍の転移によるnumb-chin syndromeの診断のもと, 泌尿器科担当医にて骨シンチを行ったところ, 胸椎, 肺など他臓器に広範囲の集積を認め, 口腔内組織の組織精検から前立腺癌の転移であることが判明した. 結論:骨内の腫瘍は肉眼的にも単純レントゲンでも明らかな所見を伴わないうえ, 感覚異常は患者の訴えによるため診断に難渋する場合が多い. 本症例のような顎骨への腫瘍転移が感覚異常として初発するnumb-chin syndromeの場合もあるため慎重な診査と他科との連携が重要である.
ISSN:1340-4903