脊髄における痛覚伝達機構

脊髄内アロディニアの発生機序として, 非侵害性感覚情報を伝えるAβ線維の軸索発芽が示唆されている. この軸索発芽は坐骨神経切断モデルと炎症モデルラットで報告されているが, その病態はまったく異なっている. 坐骨神経切断モデルにおいては, C線維の脱落がトリガーになっていると考えられている一方, 炎症モデルではC線維の脱落はなく, 感覚受容体の感作による入力の増大が誘因と推測されるが, その発生機序には不明な点が多い. そこで, 炎症モデルラットの脊髄膠様質を対象に, in vivoおよびin vivoのスライス標本を用い, Aβ線維の軸索発芽をトリガーする因子を炎症初期のラットを用いて検討した...

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Veröffentlicht in:日本ペインクリニック学会誌 2003, Vol.10 (4), p.471-475
Hauptverfasser: 吉村 恵, 又吉 達, 古江秀昌, 中塚映政, 片渕俊彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:脊髄内アロディニアの発生機序として, 非侵害性感覚情報を伝えるAβ線維の軸索発芽が示唆されている. この軸索発芽は坐骨神経切断モデルと炎症モデルラットで報告されているが, その病態はまったく異なっている. 坐骨神経切断モデルにおいては, C線維の脱落がトリガーになっていると考えられている一方, 炎症モデルではC線維の脱落はなく, 感覚受容体の感作による入力の増大が誘因と推測されるが, その発生機序には不明な点が多い. そこで, 炎症モデルラットの脊髄膠様質を対象に, in vivoおよびin vivoのスライス標本を用い, Aβ線維の軸索発芽をトリガーする因子を炎症初期のラットを用いて検討した. その結果, in vivo標本を用いたpatch-clamp記録では自発性入力の増大と, 多くの非侵害性受容体の特徴である慣れ現象の消失が起こり, 脊髄内におけるグルタミン酸放出の著明な増大が起こることが観察された. それに加え, 炎症に伴って産生されるBDNFによっても膠様質における伝達物質の放出増大がみられた. 今のところ, これらの変化がどのようにAβ線維の軸索発芽を誘起し, 膠様質に誘引するかは不明であるが, 少なくとも何らかの重要な役割を果たしているものと推測される.
ISSN:1340-4903
DOI:10.11321/jjspc1994.10.4_471