2-A-1 神経損傷による慢性疼痛,知覚低下,運動障害にケタミンが著効した一症例

神経因性疼痛に対しNMDA受容体拮抗薬であるケタミンの有効性が報告されているが, 神経損傷による疼痛のみでなく知覚低下, 運動障害も改善をみた症例を経験したので報告する. 【症例】67歳男性. 腰部脊柱管狭窄症による両下肢痛で近医受診. 神経ブロックを受けた後より右下肢の激痛を訴え, 歩行困難となった. NSAIDs, 抗うつ薬, ペンタゾシンを投与されるが改善せず, 1年4ヶ月後に当院紹介となる. 初診時, 右下肢全体にわたる疼痛があり, 知覚テストではL1～L4領域で3-4/10, L5, S1領域で0-2/10の知覚低下であった. また大腿四頭筋, 長母趾伸筋, 屈筋のMMTは2-3/5と運動障害も認められた, 神経ブロック後神経損傷の診断のもとケタミンテストを施行したところ疼痛の軽減がみられた. 以後ケタミン15mgの静注を行い, 10回施行後疼痛はなくなると共に知覚低下, 運動障害もほぼ正常化し, 歩行可能となった. 【考察】慢性神経因性疼痛に対するケタミンの有効性の報告は多くなされているが, 知覚低下, 運動障害には不明である. 神経損傷による慢性疼痛において, 疼痛以外の障害にもケタミンが有効である可能性が考えられた.