開胸術後肋間神経痛の治療経験
開胸術では肋間神経損傷に起因するニューロパシックペインの性質を帯びるため, その治療に難渋することが多いことが知られている. 今回われわれが経験した開胸術後肋間神経痛の症例について報告する. 症例:79歳, 男性. 中分化型腺癌(stageIIIb)に対して左肺全摘除術を施行. 術後は局所麻酔薬を用いた持続硬膜外ブロックおよび硬膜外モルヒネ投与で疼痛コントロール可能であったが, 硬膜外カテーテル抜去1日後より創部痛が出現しはじめ, 次第に疼痛が増強し, 夜間不眠と食欲低下が認められたため, 手術から2ヵ月後に当科を受診した. 初診時には左の前胸部から側胸部のTh4からTh10領域に感覚低下,...
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Veröffentlicht in: | 日本ペインクリニック学会誌 2000, Vol.7 (1), p.79-80 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 開胸術では肋間神経損傷に起因するニューロパシックペインの性質を帯びるため, その治療に難渋することが多いことが知られている. 今回われわれが経験した開胸術後肋間神経痛の症例について報告する. 症例:79歳, 男性. 中分化型腺癌(stageIIIb)に対して左肺全摘除術を施行. 術後は局所麻酔薬を用いた持続硬膜外ブロックおよび硬膜外モルヒネ投与で疼痛コントロール可能であったが, 硬膜外カテーテル抜去1日後より創部痛が出現しはじめ, 次第に疼痛が増強し, 夜間不眠と食欲低下が認められたため, 手術から2ヵ月後に当科を受診した. 初診時には左の前胸部から側胸部のTh4からTh10領域に感覚低下, 左のTh7からTh8領域にallodyniaがみられた. 経過:当科入院時, 開胸術後肋間神経痛と判断し, 左Th4, 5, 10の胸部交感神経節アルコールブロックを行ない, 疼痛はVAS scaleで7から3へと低下し, 若干の自発痛とallodyniaが残ったが, 退院可能となった. 退院後, 残存する疼痛に対して, プロスタグランジン, リドカイン, ニコランジル, ケタミン, およびNSAIDsを使用しフォローアップしていたが, NSAIDs以外はむしろ疼痛が増強する傾向にあり, 3ヵ月後よりコントロールできない自発痛が増強してきたため, この時点で癌性疼痛を疑い, MSコンチンの内服を開始した. 骨シンチグラフィーでは左側の肋骨にRIの集積がみられ, 肋骨への転移が疑われた. また胸部CTでは, 3ヵ月前のCTでは認められていなかった左右の胸水と右前胸壁の腫瘤が認められた. 再入院時には明らかな癌性疼痛と考えられたのでTh4/5, Th5/6でのクモ膜下フェノールブロックを施行し, 左のTh4からTh12までの感覚消失を得た結果, 疼痛はほぼ完全に消失した. 考察:癌の術後においてまだ再発や転移が確定できない時期における疼痛は, 時間的経過により, ニューロパシックペインの状態を示すことがあるが, 徐々に疼痛が引き起こす機序が変化し, 明らかな癌性疼痛へと移行していくこともまれではなく治療に難渋することが多いと思われた. われわれの経験では開胸術後肋間神経痛の患者は血管拡張薬やNa^+ channel blocker, K^+ channel opennerで疼痛が軽減する症例がみられ, 癌の再発による疼痛は初期にニューロパシックペインの性質をもち, これらの薬に比較的よく反応するが, 次第に効果の減弱と疼痛の増悪傾向がみられると思われた. したがって悪性疾患における疼痛治療においてはその経過中に再燃する疼痛に対しては画像診断等で否定的な時期があっても常に再発, 転移を疑い, 癌の5年生存率等を考慮し, 早期に患者の疼痛を除去する手段を考える必要があると思われた. |
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ISSN: | 1340-4903 |