侵害刺激としてフォルマリンを用いての脊髄後角第五層型細胞活動に及ぼすペンタゾシンの影響

侵害刺激としてフォルマリン(F)を用いて脊髄後角第五層型細胞活動(WDR細胞活動)に及ぼすペンタゾシン(Pent)の影響について観察し, また, PentのPre-emptive analgesiaに及ぼす影響についても電気生理学的に検討してみた. 方法：成猫を用いた. GOF麻酔下にて除脳, L1-2間での脊髄切断を行い, 椎弓切除後脊髄を露出した. 外科的操作終了とともに100％酸素のみにて調節呼吸を行った. 左後肢に興奮性受容野をもつWDR細胞活動は, 細胞外微小電極法により導出された. 実験を以下の如く3群に分け, WDR細胞活動を観察した. 対照値として5％F50μlを興奮性受容野に皮下注し, 60分間観察した(対照群). 同様に, Fを皮下注し, 5分後Pent 1mg・kg^-1 , 5mg・kg^-1 , を静注投与し60分間観察した(侵害刺激後投与群). 同量のPentを静注5分後, Fを同様に皮下注し, 60分間観察した(侵害刺激前投与群). 結果：対照群では, F皮下注によりWDR細胞活動は顕著な興奮反応を示し, 1-2分以内にその興奮反応は減弱し, 以後60分間続いたが, F投与以前の対照値に戻らなかった. 侵害刺激後投与群, 侵害刺激前投与群ともにPent5mg・kg^-1 により有意に抑制された. 結論：今回の研究では, 猫のWDR細胞活動を指標にしてみると, PentでのPre-emptive analgesiaが観察されなかった. また, F皮下注によるWDR細胞活動は, 時間経過により通常の痛みのみならず病的な痛みにも関与しているものと考えられるが, Pentは, 通常の痛みのみならず病的な痛み反応にもとずくWDR細胞活動を抑制するものと考えられる.