二期的閉鎖の判断に肺生検が一助となった肺高血圧症を合併した心房中隔欠損症の小児例

心房中隔欠損症(atrial septal defect;ASD)では肺高血圧症を合併する症例が存在するが,小児例での報告は少なく,治療方針の決定に苦慮することが多い.症例は10歳男児.小学4年の学校心臓検診で不完全右脚ブロックを指摘され二次孔型ASDと診断された.欠損孔径は23×16 mm,肺高血圧症の合併が判明し,心臓カテーテル検査を施行した.肺体血流比(Qp/Qs)1.6,肺血管抵抗値(Rp) 6.1 um2,平均肺動脈圧(mPAP)38 mmHgと特発性肺動脈性肺高血圧症の合併を否定できず,一期的ASD閉鎖はリスクが高いと判断,外科的ASD部分閉鎖術および肺生検を行った.術後からマシテ...

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Veröffentlicht in:心臓 2023/03/15, Vol.55(3), pp.249-255
Hauptverfasser: 五味, 遥, 関, 満, 森田, 裕介, 鈴木, 峻, 古井, 貞浩, 岡, 健介, 松原, 大輔, 佐藤, 智幸, 田島, 敏広
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:心房中隔欠損症(atrial septal defect;ASD)では肺高血圧症を合併する症例が存在するが,小児例での報告は少なく,治療方針の決定に苦慮することが多い.症例は10歳男児.小学4年の学校心臓検診で不完全右脚ブロックを指摘され二次孔型ASDと診断された.欠損孔径は23×16 mm,肺高血圧症の合併が判明し,心臓カテーテル検査を施行した.肺体血流比(Qp/Qs)1.6,肺血管抵抗値(Rp) 6.1 um2,平均肺動脈圧(mPAP)38 mmHgと特発性肺動脈性肺高血圧症の合併を否定できず,一期的ASD閉鎖はリスクが高いと判断,外科的ASD部分閉鎖術および肺生検を行った.術後からマシテンタンとタダラフィルを開始した. 術後6カ月の心臓カテーテル検査でQp/Qs 1.3,Rp 3.4 um2,mPAP 22 mmHgと肺高血圧症の所見は改善していたが,心臓超音波検査でASD欠損孔の短絡血流は両方向性であり,2分間の歩行でSpO2が86%まで低下したため,ASD閉鎖の判断に苦慮した.肺生検ではHeath-Edwards分類Ⅲ度,Index of pulmonary vascular diseaseは1.5と算出され,進んだ肺血管病変ではあるが可逆的であり,ASD閉鎖可能な状態と判断した.術後10カ月に経皮的ASD閉鎖術を施行,閉鎖術後1年の心臓カテーテル検査ではRp 2.5 um2,mPAP 18 mmHgと肺高血圧症の所見は改善し,現在,マシテンタンとタダラフィルを内服継続中である.肺高血圧症合併ASD小児例の治療方針は定まっておらず,ASD閉鎖時期の判断に迷うことも多い.本症例のように肺血管拡張薬への反応性に加え,肺生検による組織学的診断は治療時期決定の一助となりうる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.55.249