浴槽浴中急死の一主要機序

背景・目的:入浴中急死の原因については諸説あり,いまだに結論が出ていない.今回,入浴事故発見時の状況報告を分析し,入浴中急死がどのようにして起こるのか検討した. 方法:浴槽内で発生した入浴事故の聞き取り調査を1,772人に行った.心肺停止例と生存例の発見時の状況を調査した.また,生存例における意識消失の頻度ならびに浴槽内事故の発見時生存率を家庭と共同浴場に分けて調べた. 結果:浴槽内で急に意識消失する事故報告が共同浴場で7件,介護入浴で3件,家庭で2件あった.急な意識消失と救助後の急速な回復から失神と考えられた.意識消失者は溺没しても救助がなければ意識が回復しなかった.そのため発見が遅れると溺...

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Veröffentlicht in:心臓 2022/11/15, Vol.54(11), pp.1264-1271
Hauptverfasser: 前田, 貴子, 前田, 敏明
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:背景・目的:入浴中急死の原因については諸説あり,いまだに結論が出ていない.今回,入浴事故発見時の状況報告を分析し,入浴中急死がどのようにして起こるのか検討した. 方法:浴槽内で発生した入浴事故の聞き取り調査を1,772人に行った.心肺停止例と生存例の発見時の状況を調査した.また,生存例における意識消失の頻度ならびに浴槽内事故の発見時生存率を家庭と共同浴場に分けて調べた. 結果:浴槽内で急に意識消失する事故報告が共同浴場で7件,介護入浴で3件,家庭で2件あった.急な意識消失と救助後の急速な回復から失神と考えられた.意識消失者は溺没しても救助がなければ意識が回復しなかった.そのため発見が遅れると溺没して,肺炎になったり溺死したりして重症化した.共同浴場での心肺停止事故32件中に独り入浴中か否か不明の10件を除くと,全例独り入浴中であった.共同浴場での心肺停止事故は同時入浴者がいない時に起きていた.事故発見時の意識消失は重症の85%(11件/13件),中等症の93%(41件/44件)で認められ,ともに大多数を占めた.中等症例の意識消失は短時間で回復したために,救急搬送されなかったり搬送されても入院しなかったり,または短期間の入院であったりした.浴槽内事故の発見時生存率は家庭11.4%(46件/402件),共同浴場33%(16件/48件)で共同浴場は家庭の約3倍高かった.共同浴場では同時入浴者によって救助されることが多いために,生存率が高くなったと考えられた. 結論:浴槽内で急に生じた意識消失は,温熱作用と座位姿勢による体位性低血圧のために起こる失神(熱失神)と考えられた.広い浴槽内での急死の主要な機序の一つとして,独り入浴中の失神に続く溺死があると推測された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.54.1264