Cabrol手術後の冠動脈─人工血管吻合部狭窄および閉塞に対して冠動脈バイパス術を施行したMarfan症候群の1例

症例は62歳男性.Marfan症候群の家族歴があり,小学生の頃より大動脈弁輪拡大でフォローされていた.37歳の時にStanford A型急性大動脈解離を発症し,Cabrol法による大動脈基部置換術を施行された.術後16年目のCTで人工血管と左右冠動脈の吻合部狭窄を指摘されていたが無症状のため経過観察となっていた.その後徐々に心不全症状が出現し,術後23年目(60歳)の時に入院となり,両側吻合部ともに99%狭窄を認めPCIを施行された.いったんは心不全は改善したが翌年には心不全再増悪を認め,精査の結果,右冠動脈完全閉塞および左冠動脈吻合部ステント内90%狭窄を認めた.これ以上の内科的治療は困難と...

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Veröffentlicht in:心臓 2022/08/15, Vol.54(8), pp.966-971
Hauptverfasser: 榎本, 貴士, 三島, 健人, 岡本, 竹司, 大久保, 由華, 中村, 制士, 大西, 遼, 白石, 修一, 土田, 正則
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は62歳男性.Marfan症候群の家族歴があり,小学生の頃より大動脈弁輪拡大でフォローされていた.37歳の時にStanford A型急性大動脈解離を発症し,Cabrol法による大動脈基部置換術を施行された.術後16年目のCTで人工血管と左右冠動脈の吻合部狭窄を指摘されていたが無症状のため経過観察となっていた.その後徐々に心不全症状が出現し,術後23年目(60歳)の時に入院となり,両側吻合部ともに99%狭窄を認めPCIを施行された.いったんは心不全は改善したが翌年には心不全再増悪を認め,精査の結果,右冠動脈完全閉塞および左冠動脈吻合部ステント内90%狭窄を認めた.これ以上の内科的治療は困難と判断され,今回on pump beating CABG(LITA-#7,RITA-#14,RGEA-#4PD)を施行した.術後合併症なく経過し,術後29日目に退院となった.Cabrol法は大動脈基部置換術のうち小口径人工血管を用いて冠動脈再建を行う手法であり,止血視野の確保や確実な心筋保護といった点で非常に有効であり普及していったが,遠隔期の人工血管吻合部の狭窄や人工血管の閉塞が問題となった.治療方法として新たに小口径人工血管を付け替える方法やCarrel patch法として再建する方法,CABGなどがあげられる.本症例のように若年であり,低心機能で大動脈基部に高度な癒着が想定される場合は動脈グラフトを使用したCABGが有用と考えられるが,今後大動脈解離の進展の可能性もあるため注意深く経過観察していく必要があると考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.54.966