鑑別に苦慮した,免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ長期投与中に生じた心機能障害の1例

症例は65歳男性.下咽頭癌に対し4年前からニボルマブによる化学療法を受けていた.数日前より夜間起座呼吸があり受診した.血中酸素飽和度低下と,画像検査では心拡大,肺うっ血像および,びまん性の左室壁運動低下を認め,左室駆出率は27%と低下していた.血液検査では血清クレアチンキナーゼ(CPK)高値とナトリウム利尿ペプチドの上昇,12誘導心電図では前胸部誘導で陰性T波と左室肥大所見を認めた.初発の心不全として強心薬,利尿薬を用いた急性期治療の後に心臓カテーテル検査を行った.冠動脈病変は認めず,続いて心筋生検を行った.病理組織学的検査では線維増生を認め,炎症細胞浸潤はみられなかった.その他の二次性心筋症...

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Veröffentlicht in:心臓 2022/08/15, Vol.54(8), pp.944-951
Hauptverfasser: 岡田, あずさ, 黒田, 和宏, 藤原, 知洋, 和多, 一, 田中, 正道, 湯本, 晃久, 齋藤, 博則, 福家, 聡一郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は65歳男性.下咽頭癌に対し4年前からニボルマブによる化学療法を受けていた.数日前より夜間起座呼吸があり受診した.血中酸素飽和度低下と,画像検査では心拡大,肺うっ血像および,びまん性の左室壁運動低下を認め,左室駆出率は27%と低下していた.血液検査では血清クレアチンキナーゼ(CPK)高値とナトリウム利尿ペプチドの上昇,12誘導心電図では前胸部誘導で陰性T波と左室肥大所見を認めた.初発の心不全として強心薬,利尿薬を用いた急性期治療の後に心臓カテーテル検査を行った.冠動脈病変は認めず,続いて心筋生検を行った.病理組織学的検査では線維増生を認め,炎症細胞浸潤はみられなかった.その他の二次性心筋症は否定的であり,ニボルマブによる心機能障害と診断した.活動性の心筋炎所見は認めなかったため免疫抑制療法/免疫調整療法は行わずニボルマブを中止の上,慢性心不全に対する標準療法を行い軽快,退院した.免疫関連有害事象(irAE)の中で心筋炎および心筋症の報告は稀だが死亡率は高い.今後がん治療において循環器内科医の役割も増していくと思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.54.944