非心臓手術前のバルーン大動脈弁形成術後に追加の経カテーテル大動脈弁留置術は必要か

症例は78歳,女性.6年前に重症大動脈弁狭窄症(SAS)と診断されたが自覚症状なく経過観察となっていた.直近の3年間は受診歴.貧血を伴うSASによる急性心不全で緊急入院となり,治療により心不全は改善.外科的大動脈弁置換術は拒否,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は希望なく退院.その後,転移の可能性を考慮して3カ月以内の手術が望ましい進行性大腸癌が判明.退院53日目に血圧低下を伴う急性心不全で再入院.肺動脈圧の上昇を認め,血行動態の不安定化が示唆されたため早期の大動脈弁への介入が必要と判断して準緊急でバルーン大動脈弁形成術(BAV)を施行.大腸癌の手術を優先し,その結果によりTAVIを再度勧...

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Veröffentlicht in:心臓 2021/09/15, Vol.53(9), pp.983-988
Hauptverfasser: 遠藤, 哲, 太田原, 顕, 足立, 正光, 川谷, 俊輔, 網﨑, 良佑, 中村, 研介, 水田, 栄之助, 笠原, 尚, 尾崎, 就一
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は78歳,女性.6年前に重症大動脈弁狭窄症(SAS)と診断されたが自覚症状なく経過観察となっていた.直近の3年間は受診歴.貧血を伴うSASによる急性心不全で緊急入院となり,治療により心不全は改善.外科的大動脈弁置換術は拒否,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は希望なく退院.その後,転移の可能性を考慮して3カ月以内の手術が望ましい進行性大腸癌が判明.退院53日目に血圧低下を伴う急性心不全で再入院.肺動脈圧の上昇を認め,血行動態の不安定化が示唆されたため早期の大動脈弁への介入が必要と判断して準緊急でバルーン大動脈弁形成術(BAV)を施行.大腸癌の手術を優先し,その結果によりTAVIを再度勧める予定とした.心拍出量の増加と左室拡張末期圧などの心内圧の低下,僧帽弁逆流の軽減を認め,症状は消失し,BNP値は425.7 pg/mLから84.8 pg/mLへと低下し手術可能と判断した.しかし,他科との協議の結果,大動脈弁狭窄症の重症度の指標がSASの範疇に留まったことが主な理由でTAVIの目的で転院となった. 非心臓手術(NCS)の前にBAVに引き続いてTAVIの追加を行った報告はなく,ガイドラインにもBAV後のNCSの扱いについての指針は示されていない.本症例はBAV後の血行動態や症状の変化に関するNCSのリスク評価と治療方針について議論の残る症例であると思われたので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.53.983