エネルギー代謝から考える心不全の病態と治療

「はじめに」心臓は拍動し続けるために, 常にエネルギー源であるATPを合成し消費しなければならず, そのATP消費量は一日約3.5-5.0kgと言われている. 正常な成人の心臓では, 60-70%が脂肪酸, 20-30%がブドウ糖, 残りが乳酸やケトン体, アミノ酸などを基質としてエネルギー合成が行われている. 十分な酸素が供給されている状態ではβ酸化を介した酸化的リン酸化によってATPが産生される脂肪酸代謝経路が働くが, これは1モル基質あたりのエネルギー産生効率が最も高いため, 常に高エネルギー供給を要求される心臓にとっては理にかなっているといえる. しかし不全心筋では, ミトコンドリア電...

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Veröffentlicht in:心臓 2021/09/15, Vol.53(9), pp.919-926
1. Verfasser: 名越, 智古
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」心臓は拍動し続けるために, 常にエネルギー源であるATPを合成し消費しなければならず, そのATP消費量は一日約3.5-5.0kgと言われている. 正常な成人の心臓では, 60-70%が脂肪酸, 20-30%がブドウ糖, 残りが乳酸やケトン体, アミノ酸などを基質としてエネルギー合成が行われている. 十分な酸素が供給されている状態ではβ酸化を介した酸化的リン酸化によってATPが産生される脂肪酸代謝経路が働くが, これは1モル基質あたりのエネルギー産生効率が最も高いため, 常に高エネルギー供給を要求される心臓にとっては理にかなっているといえる. しかし不全心筋では, ミトコンドリア電子伝達系の機能障害が起こり, 心臓で産生されるATP量は総じて低下する. こうした状況下では, 等モル濃度の酸素下でエネルギー産生効率の良い糖代謝が, 脂肪酸代謝に比して相対的に亢進する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.53.919