高齢者心房細動患者におけるアピキサバンの薬物動態の解析
わが国の心房細動患者は75歳以上が約半数を占めており,腎機能が低下していることが知られており,腎機能に影響を受けにくいアピキサバンが有用と考えられているが,日本人では欧米人に比べ,薬物の総クリアランスが低く,血中濃度が高いことも報告されている.そこで今回,アピキサバンの薬物動態を推測するために母集団薬物動態解析モデルを用いて,75歳未満および以上に分けて検討し,あわせて腎機能の指標であるクレアチニン・クリアランス(CCr,Cockcroft-Gault式)との関連についても検討した.対象はアピキサバンを導入した非弁膜症性心房細動患者140例で,少なくとも4週間服薬継続後の外来受診時に採血し,投...
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Veröffentlicht in: | 心臓 2020/09/15, Vol.52(9), pp.1011-1020 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | わが国の心房細動患者は75歳以上が約半数を占めており,腎機能が低下していることが知られており,腎機能に影響を受けにくいアピキサバンが有用と考えられているが,日本人では欧米人に比べ,薬物の総クリアランスが低く,血中濃度が高いことも報告されている.そこで今回,アピキサバンの薬物動態を推測するために母集団薬物動態解析モデルを用いて,75歳未満および以上に分けて検討し,あわせて腎機能の指標であるクレアチニン・クリアランス(CCr,Cockcroft-Gault式)との関連についても検討した.対象はアピキサバンを導入した非弁膜症性心房細動患者140例で,少なくとも4週間服薬継続後の外来受診時に採血し,投与から採血までの時間も記録した.血中濃度はSTA-Liqud Anti-Xa活性から算出した.直接経口抗凝固薬(DOAC)は半減期が短く血中濃度がピークとトラフを形成し,数点の採血では濃度のピークを捉えることが難しいため,非線形混合効果モデルを用いて母集団薬物動態解析を行った.推測した血中濃度と実測値はほぼ良好な相関が認められ,偏りもなかった.標準投与群(5 mg×2)に比べ減量群(2.5 mg×2)で総暴露量(0-24時間までの血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-24h,area under the plasma concentration time curve)が低下していた.また,標準投与群においてのみ,70歳未満に比し75歳以上で最高血中濃度(Cmax),最低血中濃度(Cmin),AUC0-24hが有意に高値を示し,最高血中濃度到達時間(tmax),血中濃度半減期(t1/2)も有意な延長が認められた(それぞれp<0.05).CCrとアピキサバンのAUC0-24hは,有意な逆相関が認められた(標準投与群:AUC0-24h=−36×CCr+7106,r=−0.750,p<0.001,減量投与群:AUC0-24h=−42×CCr+5002,r=−0.806,p<0.001).さらに,体重,血清クレアチニン(Cr),性別,年齢がAUC0-24hに及ぼす影響を多変量解析した結果,標準投与群では,体重>血清Cr>性別の順に強く影響していた.以上から本邦における75歳以上の高齢心房細動患者におけるアピキサバン投与では,CCrの低下,なかでも低体重に影響を受け血中濃度が増加する可能性があり注意が必要であると考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.52.1011 |