骨盤内に発生したchronic expanding hematomaにより生じた静脈血栓塞栓症の1例

症例は70代女性.右被殻出血に対し当院脳外科にて加療中であったが,治療8日目に呼吸促拍と頻脈を生じ,当科を受診した.造影CT検査にて両側肺動脈内と下肢静脈に血栓と骨盤内嚢胞性腫瘤を認め,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism;VTE)の診断で当科へ転科した.また,MRI検査では骨盤内にφ=13 cm大の石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.内部は脂肪抑制併用T1強調画像,T2強調画像ともに高信号を呈し,血性の液の貯留が考えられchronic expanding hematoma(CEH)が疑われた. 転科後,ヘパリン持続静注による抗凝固治療を開始した.第10病日に下肢血管エコー...

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Veröffentlicht in:心臓 2020/06/15, Vol.52(6), pp.652-657
Hauptverfasser: 古河, 裕紀子, 小嶋, 浩士, 渡邉, 亜矢, 池内, 雅樹, 有村, 賢一, 浦部, 由利, 田宮, 貞史
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は70代女性.右被殻出血に対し当院脳外科にて加療中であったが,治療8日目に呼吸促拍と頻脈を生じ,当科を受診した.造影CT検査にて両側肺動脈内と下肢静脈に血栓と骨盤内嚢胞性腫瘤を認め,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism;VTE)の診断で当科へ転科した.また,MRI検査では骨盤内にφ=13 cm大の石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.内部は脂肪抑制併用T1強調画像,T2強調画像ともに高信号を呈し,血性の液の貯留が考えられchronic expanding hematoma(CEH)が疑われた. 転科後,ヘパリン持続静注による抗凝固治療を開始した.第10病日に下肢血管エコーにて血栓消失を認め,ヘパリン持続静注から直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant;DOAC)内服へ変更した.第21病日に実施した造影CT検査では肺動脈内の血栓の消失と下肢静脈の血栓の著減を認めた. 嚢胞性腫瘤がVTEの原因と思われ,再発の危険性があったため,第60病日に嚢胞性腫瘤を切除した.内部は血液で満たされており,組織所見で悪性所見はなく,泡沫状の組織球と慢性炎症性浸潤を認めCEHと診断した. CEHが原因と思われたVTEの稀な症例を経験したので報告した.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.52.652