心不全治療に良好な反応を示した,アントラサイクリン系抗癌剤による高度な左室収縮障害の1例

症例は31歳女性.急性骨髄性白血病にて2度の移植治療(初回:骨髄移植,2回目:同種末梢血幹細胞移植)を実施される過程で,イダルビシン36 mg/m2,ダウノルビシン7.6 mg/kg(250 mg/m2)の投与がなされた.2度目の移植実施前の心臓超音波検査では,左室駆出率64%(BNP=33 pg/mL)であったが,その約7カ月後には左室駆出率26%(BNP=3510 pg/mL)と高度の左室収縮障害が出現し,うっ血性心不全の状態で入院となった.心筋生検では心筋細胞の変性,壊死,配列異常は目立たなかったが,細胞間の線維組織の増生が目立った.採血上,CPKの上昇は認めなかったが,心筋トロポニンT...

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Veröffentlicht in:心臓 2020/02/15, Vol.52(2), pp.152-161
Hauptverfasser: 賀来, 文治, 大島, 央, 井ノ口, 安紀, 北川, 直孝, 勝田, 省嗣, 川尻, 杏奈, 黒川, 敏郎, 前田, 宜延
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は31歳女性.急性骨髄性白血病にて2度の移植治療(初回:骨髄移植,2回目:同種末梢血幹細胞移植)を実施される過程で,イダルビシン36 mg/m2,ダウノルビシン7.6 mg/kg(250 mg/m2)の投与がなされた.2度目の移植実施前の心臓超音波検査では,左室駆出率64%(BNP=33 pg/mL)であったが,その約7カ月後には左室駆出率26%(BNP=3510 pg/mL)と高度の左室収縮障害が出現し,うっ血性心不全の状態で入院となった.心筋生検では心筋細胞の変性,壊死,配列異常は目立たなかったが,細胞間の線維組織の増生が目立った.採血上,CPKの上昇は認めなかったが,心筋トロポニンTの上昇を認めた.入院後にトラセミド,ロサルタンとカルベジロールの導入を行い1.5カ月の経過で左室駆出率54%(BNP=402 pg/mL)に改善し,心筋トロポニンTも正常化した.さらに心不全治療開始から約600日が経過した時点においても,左室駆出率は51%と再低下傾向を認めず,心筋トロポニンT値の再上昇も認められていない.アントラサイクリン系抗癌剤投与による心筋障害は一般的には不可逆的とされるが,心不全の悪循環を断ち切ることにより状態の改善が得られる症例もあるため日常臨床で注意を要する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.52.152