閉塞性壁内冠動脈アミロイドーシスの1剖検例

症例は74歳男性,半年前に労作性狭心症に対して左冠動脈前下行枝へ経皮的冠動脈ステント留置術を施行した.1カ月前より再び胸痛が出現し,冠動脈造影を行った.新規病変は認めなかったが,びまん性の左室壁運動低下を認め,β遮断薬とACE阻害薬を導入した.数日後,完全房室ブロックを生じβ遮断薬中止後も洞調律に戻らずDDD型恒久的ペースメーカ植込み術を施行した.その後,呼吸困難,食欲低下,全身倦怠感を主訴に来院し心不全と診断,精査加療目的に入院となった.左室壁肥厚はなく,ピロリン酸心筋シンチグラフィや心臓MRIで特異的な異常所見はなく原因診断には至らなかった.利尿薬中心の治療で病状は安定し退院を予定していた...

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Veröffentlicht in:心臓 2019/10/15, Vol.51(10), pp.1063-1070
Hauptverfasser: 児玉, 圭太, 川人, 充知, 渡邉, 祐三, 細谷, 奈津子, 影山, 茂貴, 杉山, 博文, 竹内, 亮輔, 村田, 耕一郎, 縄田, 隆三, 森木, 利昭, 小野寺, 知哉
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は74歳男性,半年前に労作性狭心症に対して左冠動脈前下行枝へ経皮的冠動脈ステント留置術を施行した.1カ月前より再び胸痛が出現し,冠動脈造影を行った.新規病変は認めなかったが,びまん性の左室壁運動低下を認め,β遮断薬とACE阻害薬を導入した.数日後,完全房室ブロックを生じβ遮断薬中止後も洞調律に戻らずDDD型恒久的ペースメーカ植込み術を施行した.その後,呼吸困難,食欲低下,全身倦怠感を主訴に来院し心不全と診断,精査加療目的に入院となった.左室壁肥厚はなく,ピロリン酸心筋シンチグラフィや心臓MRIで特異的な異常所見はなく原因診断には至らなかった.利尿薬中心の治療で病状は安定し退院を予定していたが,院内で突然心停止となり死亡した.剖検の結果,心筋壁内冠動脈壁周囲を中心としたアミロイドの沈着を認めた.心筋間質へは軽度の沈着のみであった.アミロイドは心臓以外の多臓器にも沈着を認め,いずれも小血管壁主体に観察された.免疫染色により免疫グロブリンλ鎖陽性を認め,全身性ALアミロイドーシスと診断した.心筋壁内冠動脈のアミロイド沈着は画像所見では特徴的な所見が得られにくく,狭心症状を有するが冠動脈造影が正常な患者の心不全の原因の一つとしてALアミロイドーシスを鑑別に挙げる必要がある.本例は,アミロイド沈着が心筋間質に乏しく心筋壁内冠動脈に限局した比較的稀な疾患である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.1063