大動脈弁狭窄症のためにマスクされていた潜在的僧帽弁前尖収縮期前方運動が術中顕在化し重症化した1例

症例は,当院循環器科にて4年前に軽度大動脈弁狭窄症と診断され,保存的治療が行われてきた71歳男性.大動脈弁狭窄症(AS)の増悪により手術加療目的で紹介された.入院時経胸壁心臓超音波検査では重症大動脈弁狭窄症とS字状中隔を認めた.初回診断時より経胸壁心臓超音波検査にて左室中部~流出路の圧較差を認めたが,検査の度ごとにその心室内圧較差の程度に増減があった.冠動脈造影検査の際に左心カテーテル検査にて詳細に左室内圧較差を精査したが,いずれの部位においても軽度のみという診断であった.手術では大動脈弁置換術と左室流出路異常筋切除などを行ったが,人工心肺離脱時に血行動態不良となり,経食道心臓超音波検査にて重...

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Veröffentlicht in:心臓 2019/03/15, Vol.51(3), pp.353-358
Hauptverfasser: 三宅, 陽一郎, 籏, 厚, 大上, 賢祐, 田中, 哲文
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は,当院循環器科にて4年前に軽度大動脈弁狭窄症と診断され,保存的治療が行われてきた71歳男性.大動脈弁狭窄症(AS)の増悪により手術加療目的で紹介された.入院時経胸壁心臓超音波検査では重症大動脈弁狭窄症とS字状中隔を認めた.初回診断時より経胸壁心臓超音波検査にて左室中部~流出路の圧較差を認めたが,検査の度ごとにその心室内圧較差の程度に増減があった.冠動脈造影検査の際に左心カテーテル検査にて詳細に左室内圧較差を精査したが,いずれの部位においても軽度のみという診断であった.手術では大動脈弁置換術と左室流出路異常筋切除などを行ったが,人工心肺離脱時に血行動態不良となり,経食道心臓超音波検査にて重症僧帽弁前尖収縮期前方運動(SAM)とこれに伴う高度僧帽弁逆流および高度左室流出路狭窄を認めたため,再度心停止下に僧帽弁置換術および広範囲左室心筋切除を追加した.人工心肺離脱は容易で,術後も安定した血行動態で経過した.大動脈弁狭窄症の病態のために術前はSAMが潜在化していたが,大動脈弁人工弁置換によって高度の後負荷が解除されたことにより顕在化したものと考えられた.ASに左室内圧較差を合併することはしばしば認めるが,術前の左室内圧較差の程度が変動する場合は,SAMが関与している可能性を考慮すべきであることを示唆する1例を経験したので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.353