スニチニブ投与により一過性の左心機能低下を呈した転移性腎細胞癌の1症例

症例は70歳男性.転移性腎細胞癌に対し分子標的治療薬であるスニチニブの投与中であった.投与開始から50日目に,うっ血性心不全を発症した.スニチニブ投与前の心臓超音波検査では左心機能は正常であったにもかかわらず,左室壁運動はびまん性に高度の低下を認め左室駆出率は約20%に低下していた.分子標的治療薬の有害事象と考えスニチニブを中止した.標準的心不全治療を施行した結果,速やかに左心機能は改善した.近年本邦でも分子標的治療薬の使用が増加している.分子標的治療薬の有害事象は多彩であるが早期に診断し,適切な治療を開始すれば可逆性であることも多い.欧米では抗癌剤による重篤な副作用の予防,早期発見には腫瘍専...

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Veröffentlicht in:心臓 2018/12/15, Vol.50(12), pp.1323-1328
Hauptverfasser: 齋藤, 龍, 山下, 淳, 佐々木, 雄一, 相原, 由佳, 広瀬, 公彦, 荒井, 悌子, 星野, 虎生, 村田, 直隆, 田中, 信大, 近森, 大志郎, 山科, 章
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は70歳男性.転移性腎細胞癌に対し分子標的治療薬であるスニチニブの投与中であった.投与開始から50日目に,うっ血性心不全を発症した.スニチニブ投与前の心臓超音波検査では左心機能は正常であったにもかかわらず,左室壁運動はびまん性に高度の低下を認め左室駆出率は約20%に低下していた.分子標的治療薬の有害事象と考えスニチニブを中止した.標準的心不全治療を施行した結果,速やかに左心機能は改善した.近年本邦でも分子標的治療薬の使用が増加している.分子標的治療薬の有害事象は多彩であるが早期に診断し,適切な治療を開始すれば可逆性であることも多い.欧米では抗癌剤による重篤な副作用の予防,早期発見には腫瘍専門医と循環器専門医の連携が重要であるとの観点からOnco-Cardiologyという領域が確立されている.本邦でも高齢化が進み,癌患者の増加が見込まれている.抗癌剤,特に分子標的治療薬による心機能障害は留意すべきであり循環器内科医が熟知しておくことは重要である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.50.1323