慢性透析患者に対する心大血管手術の短期・長期成績

背景:我が国の透析患者の増加とともに透析患者に対する心大血管手術も増加している. 目的:透析患者に対する心大血管手術の短期・長期成績を明らかにする. 対象:2004~2016年の期間に当院で行われた心大血管手術1124例のうち透析患者に対する心大血管手術70例. 方法:開心術後の成績を調査し,予後に影響する因子を同定した.また,遠隔期の生存率を日本の透析人口の生存率と比較した. 結果:年齢は67.6±8.3歳,男性は40例(57.1%)であった.糖尿病性腎症が35例(50%)で,術前透析期間は平均78.1カ月であった.在院死を6例(8.6%)に認め,その内訳は下肢虚血が2例,低拍出症候群,周術...

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Veröffentlicht in:心臓 2018/11/15, Vol.50(11), pp.1207-1214
Hauptverfasser: 藏澄, 宏之, 池永, 茂
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:背景:我が国の透析患者の増加とともに透析患者に対する心大血管手術も増加している. 目的:透析患者に対する心大血管手術の短期・長期成績を明らかにする. 対象:2004~2016年の期間に当院で行われた心大血管手術1124例のうち透析患者に対する心大血管手術70例. 方法:開心術後の成績を調査し,予後に影響する因子を同定した.また,遠隔期の生存率を日本の透析人口の生存率と比較した. 結果:年齢は67.6±8.3歳,男性は40例(57.1%)であった.糖尿病性腎症が35例(50%)で,術前透析期間は平均78.1カ月であった.在院死を6例(8.6%)に認め,その内訳は下肢虚血が2例,低拍出症候群,周術期心筋梗塞,致死性不整脈,急性呼吸窮迫症候群が各1例であった.脳合併症を4例(5.7%),縦隔洞炎を2例(2.9%)に認めた.遠隔期生存率は3年70.6%,5年51.1%,10年19.2%であった.遠隔期死亡の内訳は,心疾患8例,脳血管疾患7例,悪液質3例,感染症2例,その他3例であった.心臓死回避率は3年88.7%,5年76.9%,10年54.9%であった.Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では,閉塞性動脈硬化症(ASO)の既往(Hazard比5.4,p=0.05)と縦隔洞炎の合併(Hazard比10.2,p=0.03)が遠隔期死亡に対する危険因子で,ASOの既往は遠隔期心臓死に対する単独の危険因子(Hazard比5.3,p=0.01)でもあった.生存率において,日本の透析人口は1年87.2%,3年72.6%,5年59.9%であるのに対して,本研究対象(70例)は1年85.1%,3年67.6%,5年46.7%で,有意差はなかった(p=0.12). 結語:開心術後の透析患者の予後は,日本の透析人口と同等であった.遠隔期の心疾患死亡を多く認め,術後の慎重なフォローアップが必要と考えられた.またASO合併例は予後不良であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.50.1207