大動脈弁位生体弁狭窄の急速な進行を観察し得た透析患者の1例

症例は75歳男性の透析患者で,慢性糸球体腎炎による腎不全のため2004年から維持透析を開始したが,2010年ころから労作時息切れ・透析中の血圧低下が出現.2011年に大動脈弁狭窄症により生体弁を用いて初回の弁置換術を受けたが,石灰化により再び大動脈弁狭窄症をきたして術後37カ月で再弁置換術を施行した.切除された生体弁は石灰化が著明で,検査所見でも弁の石灰化を促進するとされる高リン血症・副甲状腺機能亢進症・カルシウムリン積値の上昇などが認められた.この間経過観察のため頻回の心エコー図検査を行ったが,大動脈弁通過最大血流速度は非透析例の自己弁に比べてその増加率が大きく,また流速が3.0 m/sを超...

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Veröffentlicht in:心臓 2016/11/15, Vol.48(11), pp.1325-1329
Hauptverfasser: 寺柿, 政和, 原, 有香, 立石, 悠, 槇野, 亮次郎, 井上, 圭右, 佐井, 吉永, 秦, 健一郎, 細野, 光弘, 柴田, 利彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は75歳男性の透析患者で,慢性糸球体腎炎による腎不全のため2004年から維持透析を開始したが,2010年ころから労作時息切れ・透析中の血圧低下が出現.2011年に大動脈弁狭窄症により生体弁を用いて初回の弁置換術を受けたが,石灰化により再び大動脈弁狭窄症をきたして術後37カ月で再弁置換術を施行した.切除された生体弁は石灰化が著明で,検査所見でも弁の石灰化を促進するとされる高リン血症・副甲状腺機能亢進症・カルシウムリン積値の上昇などが認められた.この間経過観察のため頻回の心エコー図検査を行ったが,大動脈弁通過最大血流速度は非透析例の自己弁に比べてその増加率が大きく,また流速が3.0 m/sを超えると,増加率はさらに大きくなった.透析患者では急速に進行する石灰化を想定して,以前は耐用性に優る機械弁が推奨されていたが,適正な抗凝固療法の維持の難しさから透析患者では特定の代用弁は推奨されなくなり,弁の選択において最近のACC/AHAガイドラインでは,抗凝固療法の適応とそのリスクおよび再弁置換術の必要性とそのリスクを考慮して決定することとされている.透析患者での置換弁の選択の際には,欧米に比較して良好な本邦の透析患者の生命予後も考慮しなければならない.透析患者では急速に進行する大動脈弁狭窄症を念頭に置き,注意深い頻回の心エコー図検査が必要と考えられる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.48.1325