両心室血栓 : 症例報告と文献的考察
左室と右室に血栓が同時に形成される病態は極めて稀で, その臨床的特徴や予後は十分には知られていない. 今回, 両心室に血栓を生じた症例の経験を契機に, 同様の症例報告を系統的に調査した. 自験例は心サルコイドーシスと考えられる慢性左心不全の55歳男性で, プレドニン内服中に左室心尖部と右室心尖部に血栓が出現した. ヘパリンを併用したワルファリンの導入で, 明らかな塞栓症を生じることなく血栓は消失あるいは縮小した. われわれの文献的検討で, 両心室に血栓を同時に生じた31例の報告を確認した. 基礎疾患は拡張型心筋症 (7例) や心筋梗塞 (6例), 産褥心筋症 (5例) が比較的高頻度であった....
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Veröffentlicht in: | 心臓 2016, Vol.48(1), pp.56-61 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
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Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 左室と右室に血栓が同時に形成される病態は極めて稀で, その臨床的特徴や予後は十分には知られていない. 今回, 両心室に血栓を生じた症例の経験を契機に, 同様の症例報告を系統的に調査した. 自験例は心サルコイドーシスと考えられる慢性左心不全の55歳男性で, プレドニン内服中に左室心尖部と右室心尖部に血栓が出現した. ヘパリンを併用したワルファリンの導入で, 明らかな塞栓症を生じることなく血栓は消失あるいは縮小した. われわれの文献的検討で, 両心室に血栓を同時に生じた31例の報告を確認した. 基礎疾患は拡張型心筋症 (7例) や心筋梗塞 (6例), 産褥心筋症 (5例) が比較的高頻度であった. 心サルコイドーシスは2例の報告があり, 本例と同様にいずれもステロイドを内服中であった. 両室血栓に対して外科的摘出を選択した4例中1例と内科療法を選択した26例中5例の計6例が経過中に死亡した. 治療方法が不明であった1症例は血行動態が破綻した心室頻拍に対して電気的カルディオバージョンを施行されていた. 一方, 救命できた25例中9例に塞栓症が生じ, その主な内訳は肺塞栓4例, 脳塞栓3例, 下肢動脈塞栓3例, 冠動脈塞栓2例であった (重複症例あり). 両心室血栓を生じた症例の予後は一般に不良で, 塞栓症を発症する頻度が高いと考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.48.56 |