多臓器塞栓症を併発した多発性大動脈内血栓症の1例

症例は, 43歳, 女性. 入浴中に突然前胸部痛・背部痛・腰痛が出現し当院に救急搬送・入院となった. 造影CTで胸部下行大動脈遠位部から腹部大動脈に径10 ×45mmの紡錘状腫瘤状造影欠損を, その中枢側ならびに左鎖骨下動脈起始部と腸骨動脈分岐部に複数の径 5 mmの腫瘤状造影欠損を認めた. また, 脾動脈塞栓による広範な脾梗塞を認めた. 大動脈内の腫瘤が腫瘍か血栓かの鑑別が困難であったため外科的切除を検討したが, 腫瘤が広範囲に多発しており手術リスクが大きいと判断し, 診断的治療として, まずは抗凝固療法による保存的治療を行った. 第3病日に敗血症性ショックと急性呼吸促迫症候群 (acute...

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Veröffentlicht in:心臓 2013, Vol.45(12), pp.1538-1543
Hauptverfasser: 中池, 竜一, 今村, 義浩, 堤, 孝樹, 田中, 俊江, 山田, 明
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は, 43歳, 女性. 入浴中に突然前胸部痛・背部痛・腰痛が出現し当院に救急搬送・入院となった. 造影CTで胸部下行大動脈遠位部から腹部大動脈に径10 ×45mmの紡錘状腫瘤状造影欠損を, その中枢側ならびに左鎖骨下動脈起始部と腸骨動脈分岐部に複数の径 5 mmの腫瘤状造影欠損を認めた. また, 脾動脈塞栓による広範な脾梗塞を認めた. 大動脈内の腫瘤が腫瘍か血栓かの鑑別が困難であったため外科的切除を検討したが, 腫瘤が広範囲に多発しており手術リスクが大きいと判断し, 診断的治療として, まずは抗凝固療法による保存的治療を行った. 第3病日に敗血症性ショックと急性呼吸促迫症候群 (acute respiratory distress syndrome ; ARDS) を併発し, さらに第10病日には肝梗塞と上腸間膜動脈の亜閉塞をきたしたが, 大動脈内腫瘤に対し血栓を想定して抗凝固療法を継続したところ, 腫瘤の著明な縮小を認め, 血栓と診断した. 敗血症およびARDSに対しては人工呼吸下に全身管理と抗菌薬投与を行い軽快した. 軽快後の造影CTでわずかに血栓が残存したが, 塞栓症の再発や後遺症はなく第67病日に退院した. 退院後も外来で抗凝固療法を継続した結果, 発症11カ月後のCTで大動脈内の血栓はほぼ消失していた. 保存的抗凝固療法で軽快し得た, 稀な大動脈内血栓症を経験したので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.45.1538