心不全,脳動脈瘤,下腿皮膚潰瘍を呈した中小動脈血管炎の1症例
40歳代,男性.冠危険因子,血栓性素因は認めない.これまで脳動脈瘤に対するコイル塞栓術,2度の脳梗塞,両下腿難治性皮膚潰瘍にて入院加療の既往がある. 今回,肺うっ血による呼吸苦で前医入院となる.エコー上,左室壁運動は高度低下をきたしており,冠動脈造影の結果,その原因は3枝病変であることが判明した.バイパス術の適応と考えられたため,当院へ紹介となる.しかし,右鎖骨下動脈,左内胸動脈をはじめとする中小血管の狭窄,閉塞所見を認めたことから,基礎疾患として血管炎の存在が疑われた.血清学的検査では,C反応性蛋白(C-reactive protein;CRP),血沈の軽度高値を認めるほかは異常所見は認めず...
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Veröffentlicht in: | 心臓 2012/11/15, Vol.44(11), pp.1412-1418 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
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Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 40歳代,男性.冠危険因子,血栓性素因は認めない.これまで脳動脈瘤に対するコイル塞栓術,2度の脳梗塞,両下腿難治性皮膚潰瘍にて入院加療の既往がある. 今回,肺うっ血による呼吸苦で前医入院となる.エコー上,左室壁運動は高度低下をきたしており,冠動脈造影の結果,その原因は3枝病変であることが判明した.バイパス術の適応と考えられたため,当院へ紹介となる.しかし,右鎖骨下動脈,左内胸動脈をはじめとする中小血管の狭窄,閉塞所見を認めたことから,基礎疾患として血管炎の存在が疑われた.血清学的検査では,C反応性蛋白(C-reactive protein;CRP),血沈の軽度高値を認めるほかは異常所見は認めず,抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody;ANCA),クリオグロブリンはいずれも陰性であった.下腿皮膚潰瘍の精査時の生検にてlivedo血管炎を,また,結腸の輪状多発潰瘍や多発単神経炎を認めること,中,小血管の狭窄,閉塞所見が多発していることから,結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa;PN)と考えた.HBsAg,HBeAg陽性であり,HBV関連PNも疑ったが,各組織生検で動脈炎の所見を得ることはできなかったため,確定診断にはいたらなかった.術後のPNに対するステロイド導入に備え,抗ウイルス薬(エンテカビル)を開始し,HBVウイルス量の低下を確認のうえ,手術に臨んだ.術中迅速検査にて静脈炎のないことを確認したうえで,大伏在静脈グラフトを用いたバイパスを行った.その後ステロイド導入を行ったところ,CRP,血沈は速やかに正常化した.現在,ステロイド漸減中だが,グラフトの閉塞所見は認めていない.血管炎症例への冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)では,術後早期のグラフト閉塞のリスクがあるため,グラフトの選択や基礎疾患への配慮が重要と考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.44.1412 |