ストレス応答性分泌蛋白に着目した動脈硬化性心臓弁・血管病変の新規治療法の開発

近年, わが国において動脈硬化性大動脈弁・血管疾患は増加傾向にある. 大動脈弁の硬化変性機序は血管のそれと類似していることが指摘されているが, その詳細な機序は必ずしも明らかではなく有効な変性予防法は未だ確立されていない. われわれは無血管組織である関節と心臓弁との組織学的類似性に着目し, 細胞間接着に関与する骨芽細胞由来のストレス応答性分泌蛋白ペリオスチンの動脈硬化性心臓弁・血管病変における病態生理学的役割について解析した. ペリオスチンはマウス・ラットの心臓において心臓弁および弁輪部に特異的に発現しており, ヒト加齢性硬化弁や動脈硬化部位の血管新生領域で著明に発現が亢進していること, 特に...

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1. Verfasser: 伯野大彦
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:近年, わが国において動脈硬化性大動脈弁・血管疾患は増加傾向にある. 大動脈弁の硬化変性機序は血管のそれと類似していることが指摘されているが, その詳細な機序は必ずしも明らかではなく有効な変性予防法は未だ確立されていない. われわれは無血管組織である関節と心臓弁との組織学的類似性に着目し, 細胞間接着に関与する骨芽細胞由来のストレス応答性分泌蛋白ペリオスチンの動脈硬化性心臓弁・血管病変における病態生理学的役割について解析した. ペリオスチンはマウス・ラットの心臓において心臓弁および弁輪部に特異的に発現しており, ヒト加齢性硬化弁や動脈硬化部位の血管新生領域で著明に発現が亢進していること, 特に, 病的弁においてα-smooth muscle actin・vimentin陽性筋線維芽細胞やCD14陽性単球から分泌されていることを見いだした. また, 野生型マウスへの長期高脂肪食負荷により, 心臓弁・弁輪部は有意に肥厚しペリオスチン, α-smooth muscle actin, MMP-2, MMP-13, collagen Iの発現が増加した一方, ペリオスチン遺伝子欠損マウスではこれらの変化は著明に減少した. さらに, in vitroにおいてペリオスチンは冠動脈由来内皮細胞の血管腔形成能・遊走能を促進しアポトーシスを抑制した. また, ペリオスチン刺激により弁間質細胞, 血管内皮細胞, 骨髄由来マクロファージからのMMP-2, MMP-9, MMP-13の分泌が著明に増加することが明らかとなった. 以上より, ペリオスチンが血管新生, MMP発現増加, 外来性筋線維芽細胞・炎症性細胞の内皮への接着能亢進作用などを介して弁変性を進展させる可能性が考えられる. 今後は, ペリオスチン遺伝子欠損マウスおよびapoE遺伝子欠損マウスを用いて, 同蛋白の動脈硬化進展作用の検討を進めていく予定である.
ISSN:0586-4488