西平論文に対するEditorial Comment
本論文では,超音波メスの有効性を報告している.超音波を利用した手術装置としては,Cavitron社のCUSA(cavitron ultrasonic surgical aspirator)が始まりであり,数社から同様のシステムが発売されている.収縮性心膜炎に対してCUSAを用いることにより,石灰化心膜を粉末化して吸引除去することができ,心筋組織や冠動脈の損傷の危険なく心膜の切除が行えるとする報告がある.CUSAの超音波振動は約23,000Hzの周波数で,振動振幅は200~300μmである.先端部で発生するキャビテーション現象によって,結合組織の少ない組織を破砕し,血管などの結合組織に富む構造物...
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Veröffentlicht in: | 心臓 2007-04, Vol.39 (4), p.383-383 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 本論文では,超音波メスの有効性を報告している.超音波を利用した手術装置としては,Cavitron社のCUSA(cavitron ultrasonic surgical aspirator)が始まりであり,数社から同様のシステムが発売されている.収縮性心膜炎に対してCUSAを用いることにより,石灰化心膜を粉末化して吸引除去することができ,心筋組織や冠動脈の損傷の危険なく心膜の切除が行えるとする報告がある.CUSAの超音波振動は約23,000Hzの周波数で,振動振幅は200~300μmである.先端部で発生するキャビテーション現象によって,結合組織の少ない組織を破砕し,血管などの結合組織に富む構造物は影響を受けずに露出する.生理食塩水を灌流して破砕した組織を吸引できるようになっている.これに対して,著者らが使用しているEthicon Endo-Surgery社のHarmonic Scalpel(以下HS)では,CUSAの約2倍の55,500Hzの周波数を用い,振幅は逆に50~100μmと短く設定されている.タンパク質凝固が約63℃で起こるため,組織の炭化が起こらない.したがってHSは,組織損傷が少ない高度な凝固,切開能力をもち,操作性,安全性に優れた手術装置である.ブレードは種々あり,心臓血管外科領域ではフック型による内胸動脈の採取が広く行われている.著者らもフック型を使用し,心膜の剥離,切除が容易となり,出血が少なく,心室性不整脈の危険性がなかったと報告している.HSを利用して心膜切除を行うことで,手術の安全性が向上したとの報告は評価できる.収縮性心膜炎は進行性であり,自然寛解は期待できないので,早期の手術が望ましい.心膜炎による慢性炎症が心筋に及び心筋収縮能が低下した状態では,心膜切除では心機能の回復は得られない.また,臓側心外膜のびまん性硬化をきたしている場合,硬化した心外膜の完全切除は不可能であり,多数の切開を心外膜に追加する手技によっても心機能の改善は限られたものとなる.本症の手術で重要なことは,できる限り広範な心膜切除を行うことにある.一方,手術時間を短縮させることが手術の侵襲を少なくするうえで大切であることはいうまでもない.手術時間を短くするために,胸骨正中切開により心臓に到達,心臓前面の剥離を行った後に速やかに体外循環を開始,さらに剥離を進め心臓後面に対しては心停止下に心膜切除を行うことを本症に対する標準術式とすることで,両側横隔膜神経,左心房後面の心膜以外の心膜切除が可能であり,手術成績の向上が期待できる.著者らが行った方法は,体外循環なしで手術を行うことにこだわり手術時間が長くなり,術中の循環動態不安定による危険を回避するうえで有用であると考えられる. |
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ISSN: | 0586-4488 |