甲状腺クリーゼを発症した緊急冠動脈バイパス術の1例

「Abstract」不安定狭心症(u-AP)の患者に対し準緊急的に冠動脈バイパス術を行った際, 甲状腺クリーゼを発症した1例を経験したので報告する. 患者は53歳, 男性. 高血圧にて内服治療中. 甲状腺疾患の既往なし, u-APの診断にて緊急冠動脈造影が施行され回旋枝と右冠動脈の2枝閉塞病変を認めたため, 準緊急的に全身麻酔下, 人工心肺心停止下に2枝冠動脈バイパス術を施行した. 人工心肺からの離脱は問題なかったがその後, 徐々に血圧低下をきたし洞性頻脈, 心房細動をくりかえすようになった. 薬剤にて血圧維持を図るとともに大動脈バルーンパンピングも使用したが著効は得られず. また心臓は易刺激...

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Veröffentlicht in:心臓 2006-11, Vol.38 (11), p.1089-1092
Hauptverfasser: 加納正志, 黒部裕嗣, 来島敦史, 北市隆, 増田裕, 北川哲也, 山口浩司, 小柴邦彦, 河野智仁, 若槻哲三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「Abstract」不安定狭心症(u-AP)の患者に対し準緊急的に冠動脈バイパス術を行った際, 甲状腺クリーゼを発症した1例を経験したので報告する. 患者は53歳, 男性. 高血圧にて内服治療中. 甲状腺疾患の既往なし, u-APの診断にて緊急冠動脈造影が施行され回旋枝と右冠動脈の2枝閉塞病変を認めたため, 準緊急的に全身麻酔下, 人工心肺心停止下に2枝冠動脈バイパス術を施行した. 人工心肺からの離脱は問題なかったがその後, 徐々に血圧低下をきたし洞性頻脈, 心房細動をくりかえすようになった. 薬剤にて血圧維持を図るとともに大動脈バルーンパンピングも使用したが著効は得られず. また心臓は易刺激性でわずかな接触を契機として心室細動にいたり電気ショックによる除細動をくりかえし要した. 極度の低カリウム血症を認めたため補正を行い, それに伴って洞調律へ回復し心臓の易刺激性も消失して手術を終了し得た. 術後も頻脈, 低血圧は続き40℃の高度発熱をきたした. また急性腎不全へ進展したため第4病日より持続血液濾過透析を開始したところ, 血圧は速やかに上昇し利尿も回復, 循環動態は安定し第10病日に呼吸器より離脱し得た. その後は順調に軽快したが頻脈が持続するため甲状腺機能検査を行ったところ, 甲状腺機能亢進症を認めた. これでようやく術後の一連の出来事が甲状腺クリ‐ゼによるものと診断された. 術後の予期し得ない循環動態の不安定化, 高度発熱は, 甲状腺クリーゼも念頭において対処すべきと思われる.
ISSN:0586-4488