北八ヶ岳における亜高山帯針葉樹林に及ぼすニホンジカの影響: 20年間の観測に基づく森林動態

本研究では亜高山帯針葉樹老齢林内に設定した1 ha固定調査区において,20年間の樹種・階層ごとのニホンジカ被害が林分動態と優占樹種の更新に及ぼす影響を明らかにし,今後の林分の存続可能性を検討した。林冠木(DBH 5 cm以上で林冠層近くに達する),下層木(DBH 5 cm以上で林冠層に達しない)および稚樹(DBH 5 cm未満かつ樹高1.3 m以上)の各階層における累積被害割合は2011年までに急増した。各階層の被害幹の69~88%に剥皮がみられた。死亡率は林冠木と下層木で2011~2016年に最も高く,稚樹ではほぼ横ばいに推移した。生残割合は樹種により異なり, 2020年までに樹種構成が大き...

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Veröffentlicht in:Nihon Shinrin Gakkaishi 2023/06/01, Vol.105(6), pp.216-224
Hauptverfasser: 平岡, 裕一郎, 西村, 尚之, 小山, 泰弘, 岡田, 充弘, 柳澤, 賢一, 鈴木, 智之, 新其楽図
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:本研究では亜高山帯針葉樹老齢林内に設定した1 ha固定調査区において,20年間の樹種・階層ごとのニホンジカ被害が林分動態と優占樹種の更新に及ぼす影響を明らかにし,今後の林分の存続可能性を検討した。林冠木(DBH 5 cm以上で林冠層近くに達する),下層木(DBH 5 cm以上で林冠層に達しない)および稚樹(DBH 5 cm未満かつ樹高1.3 m以上)の各階層における累積被害割合は2011年までに急増した。各階層の被害幹の69~88%に剥皮がみられた。死亡率は林冠木と下層木で2011~2016年に最も高く,稚樹ではほぼ横ばいに推移した。生残割合は樹種により異なり, 2020年までに樹種構成が大きく変化した。林冠木および下層木の肥大成長により胸高断面積合計は微増した。各階層への加入率は調査期間中にそれぞれ0.1%未満に低下した。2011年以降の死亡率と加入率に基づいた場合,林冠木の本数は68~90年後に半減すると試算され,被害程度が軽減されない場合,近い将来,森林の衰退につながる可能性が高いことが示された。
ISSN:1349-8509
1882-398X
DOI:10.4005/jjfs.105.216